孤立した館で、一人一人殺されていく。。。
そして誰もいなくなった。
不朽の名作にして、最高傑作と名高いアガサクリスティーの作品です。
今回紹介する「アリス・ミラー城 殺人事件」はまさにそして誰もいなくなったを彷彿とさせる恐怖を持ったミステリー小説になります。
ラストは意見が分かれるかなり難しい作品でした。
ここではそんな「アリス・ミラー城 殺人事件」の感想とネタバレ解説、アンフェアな部分と納得いかない部分について紹介していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
「鏡の国のアリス」の世界を思わせる孤島に立つ「アリス・ミラー城」
今回はクローズドサークルと呼ばれる城が舞台。
「アリス・ミラー城」に集められた探偵たちの目的は、「アリス・ミラー城」に隠された「アリス・ミラー」を見つけることだった。
しかし、クローズドサークルという「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせる空気と異様な形で置かれたチェス盤に探偵たちは嫌な予感を抱く。
そして、ついに密室状態で一人目の死体が発見される。
そしてチェス盤にも異変が、一手ずつ確実にコマが減っていきそれと同じくして探偵たちも遺体となって見つかっていく。
誰が、なぜ、どうやって?
一人一人殺される中で周りの全てが信用できなくなった時、あなたは衝撃の事実を知ることになるはず。
最後に結末を見てあなたは「そして誰もいなくなった」を超えた。。。とつぶやくかもしれない。
本書の概要
ページ数
解説含めず文庫サイズで448ページ。
全462ページの作品となっています。
読むのにかかった時間
一日40分ほどの時間をとって1週間ほどで読み終わることができました。
なので、トータルすると大体3.5時間ほどで読み切ることができると思います。
密室トリックや叙述トリック部を考え出すともう少しかかるでしょう。
構成
三人称で描かれ、事件の際は事件現場を図として解説してくれるので非常にイメージが湧きやすいと思います。
セリフも多く、テンポ良く読むことができます。
難しいシュールレアリスムという話も出てきますが、本編にさほど重要ではないので無視してしまって構いません。
考え方として難しいものがありますが、読み飛ばすなり、理解をせずともミステリーとして十分に楽しむことができると思います。
書評(ネタバレなし)
「アリス・ミラー城殺人事件」を読み終わって真っ先に思ったのは、「あ、うん・・・」でした。
賛否が分かれそうな終わり方かつ、トリックも大胆不敵かつかなりグレーなトリックだったのです。
僕は終わり方自体に不満はないのですが、トリックが少しフェアじゃない気がしました。
アンフェアだと思った部分についてはネタバレになりますので、この場ではしません。(後述します)
殺人事件に出てくる密室トリック自体も正直そこまでの驚きはなかったです。
ただ一人一人殺されていき、誰がやったのかわからない謎にはかなりドキドキハラハラさせられました。
久々に読んでて登場人物の生き死ににドキドキしました。
やはり王道ながら、クローズドサークルで徐々に人が死んでいくというのは傑作ですよね。
トリックや作者が仕掛けた罠については不満は残るものの、全体を通してはかなり面白かったと思います。
不気味な雰囲気はずっとあるので、ホラーが絶対無理という方にはおすすめしませんね。
バラバラ死体が出てきたりするので、グロいのが苦手という方も厳しいかもしれません。
僕は最後まで読んだ夜はちょっと寝つきが悪かったです。
もしかしたら、後ろに犯人がいるかも?とか思っちゃったりして(笑)
感情移入することは少ないと思いますが、かなりドキドキハラハラできるミステリーだと思います。
そして誰もいなくなったを彷彿とさせながらも、全く違うトリックを使ったオチは面白いと思いました。
やりたいことはわかりますし、やりきったこともすごいと思うトリックです。
ただやはりアンフェア感は否めないかなというのが僕の感想です。
おすすめ度
「アリス・ミラー城」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
真ん中よりは面白いけど最終的な伏線回収やら驚きという観点はどうしてもアンフェア感が否めず低いという感じ。
雰囲気最強なのに、アンフェア感が僕は許せないのでこの評価です。
もしかしたら、人によってアンフェアを感じず素晴らしい伏線回収と驚きになるかもしれないので好みかどうか試してみて欲しいと思いました。
ネタバレ ラストの解説
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
ではネタバレ、ラストの解説をしていきます。
最終的な犯人はアリスでした。
登場人物が読者視点だと10人だと思っていたけれど、本当はアリスという人物が最初から出てきており、アリスが犯人というわけだったのです。
アリスは随所に名前が出てくるものの、「鏡の国のアリス」の説明をしていると思われる描写とかぶって読者視点からは全くの死角になっています。
僕も実際に読んでいてアリスという11人目の登場人物に全く気づきませんでした。
ちょっと無理矢理な感はありますが、この10人だと思っていたけれどそれは被害者の数で、本当は11人の登場人物で最後の最後で明かされる11人目こそが真犯人だったというのが大きな「アリス・ミラー城殺人事件」のトリックになります。
密室トリックはホースと糸を使ったものでした。
トリックの詳細については割愛します。
「アリス・ミラー城殺人事件」の叙述トリックは、アリスという11人目の存在がいるのにも関わらず、最後の最後までその存在が読者にはわからないように作られているというものでした。
アリスという名前自体は確かに出てくるのですが、まさか11人目だとは思わないそんな思い込みに漬け込んだトリックだったわけです。
ただ、僕は正直アンフェアな話だったと思っています。
それについて次の章で詳しく話していきます。
ネタバレありアンフェア感想、指摘
僕がアリスという11人目の存在がアンフェアだという根拠に、入瀬の発言があります。
正確には発言ではなくあくまで書いた文字なのですが、
「もういきのこっているのは
わたしたちだけなのよ!
わたしたちがはんにんじゃないなら
かれしかいないじゃない」
というセリフがあります。
読者の視点からは残り3人でそのうち一人である入瀬から出たセリフです。
完全にこれおかしいですよね?
アリスという存在は読者だけがわかっておらず、登場人物では認識していた存在なのに、入瀬はアリスを完全に犯人候補から外しているのです。
入瀬のみアリスにあったことない説も考えましたが、初日の夕食では全員がその場にいましたので、アリスを入瀬だけ知らないというのはありえません。
その一点のみ僕はすごい引っかかったのでアンフェアだと考えています。
反論や別解釈があればぜひ、聞きたいです。
僕はむしろ納得したいのです。
逆に海上が「事件現場でアリスを見た」と言う発言はうまい伏線だと感心しちゃいました。
アリスは登場人物ではなくあくまでも「鏡の国のアリス」のアリスを言っているものだと思い込んでいましたので海上が妄想を言ってら~と思ったのですがまんまと騙されてしまいました。
初日の夕食の場面でも実はアリスが自己紹介しているのも、かなりうまいと思いました。
ただやはり一点だけ、入瀬のセリフだけが引っかかってしまっています。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は「アリス・ミラー城殺人事件」について紹介しつつ、ネタバレ解説、僕の感想について書いてきました。
やりたいことはすごいわかりますが、納得のいかない部分が一点だけあって腑に落ちないと言うのが正直なところです。
ここだけうまく飲み込めればもっと楽しめ、驚けたかなと思ってしまいます。
とはいえ、最後の最後までドキドキハラハラ、夜読むと寝つきが悪くなる点も含めスリル満点のミステリーですごいよかったです。
そして誰もいなくなったを知っている人は、さらに楽しめるかと思います。
ミスリードやちょっと嫌味な探偵が大勢出てきます。
誰が生き残るのか、ぜひその目で確かめてみてください。
もしその後で僕の解釈と違う、めちゃめちゃフェアなトリックだと思った方がいれば、ぜひご意見聞かせてほしいです。
では、誰もいなくなるのか?それともあなたの推理で犯人を見つけることができる方が早いか、試してみてください。
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