おぉ~おもしれぇからの、えぇーそう来るの!?という小説読んだことありますか?
まさに今回紹介するのはそんな一冊でした。
森博嗣さんの「そして二人だけになった」は、クローズドサークルで次々と人が殺されていく作品で「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品です。
ただ、そのオチへの持っていき方は全く異なる不可思議なミステリーとなっています。
この記事では、そんな「そして二人だけになった」の内容を一部ネタバレありで紹介していきます。
では、いってみましょう!

あらすじ

とてつもなく大きな橋を支えるコンクリートの塊の中。
国家機密とされるシェルターがあった。
現代の最高技術で作られたこの密室に滞在することになった6人が一人ずつ殺されていく。
痺れるような緊張感の中、最後に残った二人。
果たして犯人はどっち?それとも第三の人物がいるのか?
ラストにかける怒涛のどんでん返しは、何が何だかわからなくなってしまう!?
賛否両論の驚愕ミステリー!!
本書の概要

ページ数
解説含めず、556ページ、全569ページでした。
読むのにかかった時間
大体6時間半ほどで読み切ることができました。
構成
二人の人物の一人称で描かれる構成でした。
科学的な用語が多いながらも、事件とは直接関係なかったり上手い解説が行われるので理系文系問わず読むことができる内容だと思います。
書評(ネタバレなし)

あーすごかったのにー!ちょっとここまでどんでん返しさせなくてもよかったかな。というのが僕の正直な感想でした。
まず、終始ワクワクしてドキドキする展開は見事で、次はどう殺されるのか主人公たちはどう乗り切るのかハラハラする展開は面白かったです。
そこからなんとか脱出、事件の真相に気づくまでの流れも完璧でした。
ただ、そこからさらにどんでん返しを狙ったのはやりすぎだと僕は思ってしまいました。
正直、アンフェアギリギリの手法だなぁと感じたのです。
ここまでどんでん返しを狙わなくても、僕くらいのどんでん返しマニアなら十分すぎる!と思いました。
やりすぎたためにある種分かりづらくなっているし、アンフェアだと言われるようなミステリーになってしまっていると思います。
賛否両論というのを事前に聞いていましたが、確かにこれは賛否別れると思いました。
僕としては「すべてがFになる」のどんでん返しぐらいがちょうどよかったですし、納得もできました。
正直今回は、奇をてらいすぎてやりすぎちゃった系だと思います。
読者の裏の裏を読みすぎて、普通に読んでいて分かりづらくなっている結果です。
なので、惜しい。というのが僕の感想で書評。
面白くないわけではないので、もったいないという思いが一番ありました。
おすすめ度

森博嗣さんの「そして二人だけになった」のおすすめ度は、5点満点中3点です。
決して悪くはないけど、おすすめを強くはしないし他の優先して読んで欲しい作品があるという評価。
まず作品として面白いのは間違いありません。
ただ、オチの部分に少し疑問が残る部分や無理矢理なところがあるのが気になりました。
なので手放しではおすすめできないかなという評価です。
また、森博嗣さんの作品だと「すべてがFになる」が傑作なので、「そして二人だけになった」よりも先に読んで欲しいという意味でもおすすめ度を下げています。
矛盾はなさそうですが、僕としては1回目の謎解明で十分すぎると思いました。
ちょっとやりすぎたどんでん返しを読みたい方は挑戦してみてもいいかもしれないですね。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじをやっていきます。
勅使河原潤の弟は、勅使河原潤と異母兄弟でした。
そんな弟は勅使河原潤と顔がそっくり、そのため勅使河原潤の替え玉として雇われていました。
勅使河原潤は有名な盲目天才数学者です。
忙しい毎日なので、少しでも自分の実験をするために弟を替え玉に番組に出演させたりしていました。
今回も勅使河原潤は弟を替え玉に、国家機密とされるシェルターの実験宿泊に参加させました。
勅使河原潤として弟は振る舞います。
一方、勅使河原潤の助手である森島有佳もまた、姉とそっくりの妹が替え玉としてやってきました。
二人はそれぞれが偽物でありながらもその正体を知らないという状態でシェルターにやってきました。
シェルターには二人の他に4人の博士や医師が同行してきました。ただ1日目から事件は起き、夜中に一人の男性が殺され、二日目にはシェルターに閉じ込められる状況に、さらに殺人は続き最終的に2人へとなってしまうのです。
森島有佳は勅使河原潤を、勅使河原潤は森島有佳をそれぞれ犯人だと思いながら、相手に愛情を芽生え始めさせていた二人はそれでも一緒に行動しなんとかシェルターから脱出を試みるのでした。
なんとか脱出したときには、大きな爆発音でバラバラになり、それぞれ病院へと運ばれました。
警察の調査が入るものの、国家機密のシェルターであったことも起因し事件は隠蔽される方向へと動いていきます。
監視されながら生活することになった二人。
ですが、新聞の記事を見て勅使河原潤(弟)は事件の真相に気づきます。
真相とは、実は二つのシェルターで起こった事件だったというものでした。
勅使河原潤(弟)と一緒にいたのは森島有佳の本物で、森島有佳(妹)と一緒にいたのは勅使河原潤の本物で。
それぞれ一方のシェルターで起こった事件をもう一方が模倣して勅使河原潤(弟)と森島有佳(妹)に同じシェルターに居させたよう見せたと推理します。
こう考えると、二人しか生き残りがいないのに、二人とも犯人ではない理由に説明がつくというのです。
本物の勅使河原潤がシェルターAで殺人を行い、森島有佳(妹)を巻き込む。
本物の森島有佳がシェルターBで殺人の模倣を行い、勅使河原潤(弟)を騙す。
これによって、シェルターはひとつで二人は同じ人物だと思わせることで犯人を隠蔽したと推理します。
その話を聞いた警察は納得するものの、勅使河原潤(弟)の矛盾点を心で思うのでした。
実は、勅使河原潤には弟が存在しないこと、森島有佳にも妹は存在しないのです。
全てが勅使河原潤の妄想であるという考えでした。
森島有佳もまた存在せず、勅使河原潤が多重人格で4人の人物を入れ替えて演じていたというのです。
つまり、犯人も生き残ったのも勅使河原潤一人であるという事実。
とはいえ、勅使河原潤は一人ではなく二人であるかのような妄想を抱いたまま生活を続けるのでした。
警察の語りが正しいのか、それとも勅使河原潤(弟)の推理が正しいのか、それは最後までわからない作りでした。
トリックの解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここからは、「そして二人だけになった」に隠されていたトリックについて詳細に解説していきます。
勅使河原潤は実は一人で、他の勅使河原潤(弟)、森島有佳も森島有佳(妹)も全て多重人格だったというオチ。
森島有佳はあくまでも、物語の中では語っているだけで他の登場人物には見えていないというのがトリックでした。
とはいうものの、正直読み返してもそれを裏付けている部分は少ない印象です。
女性の医師との口論になっている部分など、森島有佳が実在しなければおかしい場面もあるような気がしました。
ただ、これは全てが勅使河原潤の妄想だった説とすると納得も行きます。
多重人格で他の人格をはっきりと目で捉えられる勅使河原潤が単純に妄想で作り上げた物語が、本書で、実際はただ勅使河原潤が人を殺していたという話。
森島有佳が語り手となっている部分は全てただの妄想で、医師との会話も存在しないという方向です。
これだったら、全てが多重人格による自作自演という持って生き方も納得できますかね。
とはいえ、それでもアンフェア感は否めません。
語り手の一人がただの妄想というのは流石にやりすぎな気がしますね。
フィクションをフィクションにしたら、小説から逸脱しすぎている気がします。
なので、僕としては勅使河原潤(弟)がたどり着いた推理、シェルターが実は二つあった説が好きですね。
警察の語りの方が誤りだった説を僕は推したいです。
まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、森博嗣さんの「そして二人だけになった」を紹介してきました。
手に汗握る展開は面白かったですが、ちょっとやりすぎたどんでん返しは僕の好みから少しずれていました。
とはいえ、面白いことは確かなので、気になる方はぜひ一度お手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

