最後のページで伏線が回収される背筋が凍る体験したくありませんか?
今回紹介する道尾秀介さんの「いけないⅡ」は短編集にも関わらず、毎度最後のページで震える伏線回収がある小説です。
短編集嫌いの僕ですら「いけないⅠ」は最高に楽しんで読むことができ、「いけないⅡ」はそれの続編に当たります。
この記事ではそんな「いけないⅡ」のあらすじ、基本情報をまとめ、書評をしていきます。
一部ネタバレありの要約と解説です。
では、いってみましょう!
あらすじ
3つの“いけない”と冠せられるタイトルの短編集。
最後には全てが繋がる驚きの展開となる「いけないⅡ」
“いけない”シリーズ恒例の最後のページの一枚の挿絵でこれまでのストーリーが覆る仕組みはそのままに、驚きとゾクっとする真実を知ることができます。
読んではいけない?ほど、どハマりしてしまう恐ろしい短編ミステリーを読む覚悟があなたにはありますか?
本書の概要
ページ数
全280ページです。
読むのにかかった時間
だいたい3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
明神の滝に祈ってはいけない、首無し男を助けてはいけない、その映像を調べてはいけないという三つの章と、祈りの声をつなげてはいけないという最終章で全てが繋がる構成になっています。
それぞれ独立した短編でありながら繋がっているという方式で、主に三人称視点で描かれる内容でした。
いけないⅠについては別記事で紹介していますので、読んでみてください。
書評(ネタバレなし)
いけないシリーズやっぱ面白いわぁ、というのが感想です。
いけないⅠも間違いなく人生のランキングTop10に入るくらい面白いと思いました。
正直「いけないⅡ」はⅠほどは面白くありませんでしたが、安定的な面白さはあったと思います。
「いけないⅠ」同様、最終的に全ての事件が繋がって最後の1ページには深い意味が隠されているという仕掛けも健在でした。
ちょっと不満があったところとしては「いけないⅠ」よりも衝撃度が少なかったところです。
一瞬はてなマークが出る写真もあって、読み返してようやく、そういうことかと納得できる部分がありました。
「いけないⅠ」では意味がわからない写真は一枚もなく、すぐに理解できて背筋がゾッとする伏線回収と物語のオチがあったのですが、「いけないⅡ」だとその部分がパワーダウンした印象です。
ちなみに「いけないⅠ」と「いけないⅡ」に関連性は一切なく、登場する人物は異なるものになります。
なので、どちらから読んでも問題なく楽しむことができます。
圧倒的に「いけないⅠ」の方がおすすめなので、「いけないⅠ」を読んだことがない方はそちらから読んでみるのがいいと思います。
「いけないⅡ」は読みやすさは健在で、話の展開は理解できるもののオチが弱かったりオチの意味が分かりづらいというのが感想です。
ただ、全ての短編集が繋がっているという書き方は非常に面白かった。
全ての短編を読み最終章に行き着くことで、事件の全容が見え、スッキリすることができます。
また、あえて最後の最後に全てを書き切らない部分も好感が持てました。
最後の最後、意味を読者に投げかける終わり方になっていて、一部の読者にはちゃんとわかる形で書いて欲しいと言われそうですが、僕としては意味を汲み取って納得して本を閉じることができました。
一冊の短編集として面白く、納得できる作品でした。
ですが、どうしても「いけないⅠ」と比べると見劣りしちゃう出来かなというのが僕の感想になります。
おすすめ度
「いけないⅡ」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
やはり「いけないⅠ」の方が面白かったので、そっちの方をおすすめしたい。
「いけないⅠ」を読んで、面白かったから続編も読みたい。という方以外には特にお勧めはしません。
まずは「いけないⅠ」をぜひ読んでほしいと思いました。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからは、ネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。
では、まずネタバレありのあらすじ、要約からやっていきます。
三つの章について、あらすじ要約を紹介して、最終章をする形で進めます。
第1章:明神の滝に祈ってはいけない
緋里花という女子高生が行方不明になり、1年が過ぎたという設定で始まる物語。
緋里花の妹・桃花は行方不明になった緋里花を探して、緋里花のSNSを元に緋里花の行方不明になった時の行動を追ってる視点でした。
もう一つの視点が、明神の滝近くの小屋の管理をしている管理人でした。
管理人は謎がある様子で、女子高生の死体を冷凍庫に隠しているとみられる怪しい人物でした。
桃花は緋里花の行動を追い、ついに管理人の小屋に死体が隠されているのを見つけます。
管理人が迫る中なんとか逃げようとするものの、桃花は最終的に捕まり殺されてしまうのです。
実は管理人視点は一年後の世界で、冷凍庫に隠していたのは緋里花と思われていましたが、桃花だったというオチでした。
第2章:首無し男を助けてはいけない
真と呼ばれる少年が主人公の話で、友達をドッキリに、はめるべく叔父の力を借りて肝試しを手伝ってもらうことにしました。
森に首無し人形を吊るすことで、ビビらせる計画でした。
人形を吊るして叔父さんの車で帰ろうとしたところ、運転のミスで木にぶつかってしまいます。
せっかく吊るした人形がその時流れてしまいます。
しょうがなく帰ると、友達の一人が行方不明だと友達の母から連絡がきます。
そして、実は流れてしまったのは友達だったのではないかと叔父さんに相談する真。
しかし、きちんと確認すると友達は警察に事情聴取されているだけだったとわかり、叔父さんにやはり流れたのは人形だと言いに行ったところで、叔父さんが首を吊って死んでいるのを発見してしまいます。
第3章:その映像を調べてはいけない
一本の「息子を殺した」という電話から始まる今回の物語。
千木孝憲が自首してきた千木家の家長で、息子の暴力に悩まされていた人物でした。
孝憲の話では、息子の孝史に殺されかけたので、殺してしまいパニックで死体を埋めたというのです。
警察はなんとかその死体を見つけようと奮闘するものの、最終的に死体は見つかりませんでした。
事件の真相は、孝憲が殺されかけた時に孝憲の妻・智恵子が包丁で刺したのです。
そして、死体はどこかに埋めに行ったのではなく、自宅の床下に埋めただけでした。
孝憲は智恵子を庇う形で自首し、最終的に死体は見つからず捕まりませんでした。
最終章:祈りの声をつなげてはいけない
緋里花はどこへ行ったのか、智恵子が隠しているもう一つの謎が残った状態で、始まる最終章。
この二つの謎は繋がっていました。
智恵子が隠していた真実は、息子である孝史が実は殺人を犯していて死体を床下に埋めていたというものでした。
息子を殺した後、床下に埋めようとしたタイミングで床下の遺体に気づき、息子が女子高生を殺していたというのを理解していました。
それを隠すべく、床下の女子高生の遺体は別の所に埋め、床下には息子を埋めると言う形にしました。
そして、その床下に埋まっていた遺体が緋里花だったのです。
緋里花は行方不明になった日、ネットで知り合った孝史と会っていたのです。
二人は揉めて、孝史が緋里花を殺してしまったんだろうという予想で、物語は終わります。
この真実は、智恵子だけが知っている状態で、警察は何も知らないという形です。
最後のページには緋里花のスマホの電源が入り、そこに桃花からの電話がかかってくるという写真で結末しています。
この意味と解釈について次に考察していきます。
解説(ネタバレあり)
ネタバレありの解説を行っていきます。
最後のオチの部分について、ここでは解説を行います。
最終章の最後のページに残されたスマホの写真、電話がかかっている様子が映っていました。
電話をかけてきたのは「桃花」で、緋里花の両親がかけてきたという様子が最後のページの写真でした。
これの最終的な意味は、「緋里花の死体も見つかって、千木孝史の死体も見つかる」というものだと僕は考察します。
緋里花のスマホを智恵子が持っていたという事実があり、そのスマホが桃花の携帯を持つ緋里花の両親が電話をかけたという構図になっています。
これはつまり、緋里花のスマホをなぜ智恵子が持っているのかという疑問につながってきます。
これによって、智恵子が隠していた息子・孝史が緋里花を殺した犯人というのがバレるはずです。
緋里花のスマホを持っている理由を智恵子に警察が聞けば、智恵子の感情的に全てを明かすと考えられるからになります。
電話がかかっている様子は警察がおそらく目にするというラストだったので、こうなることはほぼ確実だと思われます。
このオチになれば、登場人物全ての願いと救いがある形にもなりますし、綺麗にまとまった話だと言えるでしょう。
あくまで写真とそれまでの流れから考えられる考察になります。
まとめ
今回は道尾秀介さんの「いけないⅡ」の書評、要約を行ってきました。
いけないⅠほどではないものの、しっかりと最後のページで考えや伏線が回収される展開は見事でした。
短編集なので、読み進めやすい特徴と長編のしっかりと伏線が張られている作品です。
この「いけない」短編シリーズはぜひⅢも出て欲しいと思います。
それくらい短編からの全てがつながっているオチというのは、癖になる面白さだと感じます。
短編を楽しみつつ、長編の伏線回収を味わい方はぜひ読んでみて欲しいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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