10分でわかる森博嗣「冷たい密室と博士たち」書評&解説

小説の書評

前作「すべてがFになる」の続編にあたる「冷たい密室と博士たち」

正直、「すべてがFになる」の後だと見劣りしてしまうが王道密室ミステリーです。

しかし、ミステリーの王道が好きな方には刺さる作品でした。

今回はそんな「冷たい密室と博士たち」の内容紹介とネタバレしつつ解説をしていきます。

では、いってみましょう!

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
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あらすじ

同僚の誘いで低音度実験室を訪れる主人公、犀川助教授と学生、西之園萌絵。

実験を見学させてもらったその夜、衆人環境かつ密室状態の実験室で男女二名の大学院生の肢体が発見される。

完全な密室の部屋に残るのは死体のみ。

果たして死体はどうやって中に入ったのか。

果たして犯人はどうやって外に出たのか。

密室殺人に挑む犀川助教授と西之園萌絵は驚愕の真実とトリックを暴くことができるのか。

理系ミステリー作で名高い森博嗣氏の犀川・西之園シリーズの第二弾。

精密に組まれた完全犯罪にあなたはきっと凍りつく。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

正直、驚きが少ない作品

犀川・西之園シリーズの第二弾として読んだ本作ですが、

正直第一作の「すべてがFになる」の方が個人的には好きでした。

というのも、今回の密室トリックには驚きが少なかったからです。

あまり詳細は書きませんので安心して欲しいんですが(後ほど「ネタバレを含んだ感想」部ではネタバレします)

僕は「すべてがFになる」トリックの方が驚きましたし、想像を超えてきたと思います。

「冷たい密室と博士たち」は綺麗な密室殺人という印象を受けました。

驚きこそ少ないトリックであるものの、きちんと組み上がった密室はミステリーとして完璧だと思います。

だが、やはり「すべてがFになる」の後に読んでしまうと物足りなさを感じてしまったのです。

1作目と2作目どちらをおすすめするかと言われれば、間違いなく1作目の「すべてがFになる」を推すと思います。

ですが、あくまでこれは僕の好みの問題で、本格ミステリー感が強い密室を好む読者にはむしろ「冷たい密室と博士たち」の方が密室というワクワクを感じると思います。

もちろん、作者の森氏の真骨頂である理系の掛け合いは健在です。

理系的な掛け合いはありますが、特に難しい専門用語などは「すべてがFになる」ほど出てこなかったので

専門用語がわからなくても想像しやすいという点で「冷たい密室と博士たち」の方が読みやすいとはいえると思います。

「冷たい密室と博士たち」は「すべてがFになる」で取り損なった読者層、密室などの完全犯罪を崩す系のミステリーが好きな方が納得するような作品だと思いました。

僕は多少無理くりでも想像を超えたトリックがある方が好きなので、「冷たい密室と博士たち」には良い印象を抱かなかったのかもしれません。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

自分の好みを知ることが読書では大事

少し、酷評気味になりつつありますが、あくまでこれは僕の好みによるものだと改めて注意してください。

僕の好みとしては、トリックが奇抜で伏線回収で鳥肌が立つようなミステリーや謎が謎を呼ぶドキドキ系ミステリーなのです。

好きな小説を上げるなら「ハサミ男」「ゴールデンスランパー」「魔王」などです。

好きな作者としては、伊坂幸太郎になります。

だいたい僕の好みはわかっていただけたでしょうか。

今あげた作品が未読な方はぜひ、読んでみてください。

人生観、小説観が変わること間違いなしです!

ハサミ男 (講談社文庫)
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ゴールデンスランバー (新潮文庫)
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魔王 (講談社文庫)
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僕と好みが似ている方は、「冷たい密室と博士たち」についても似たような印象を持つかもしれません。

伏線らしい伏線は少なく、密室の超現実的かつ論理的なトリックを暴くというスタンスで進む「冷たい密室と博士たち」は、ちょっとだけ単調だと感じてしまいました。

これは、僕がワクワクや次に何が起こるか分からない系が好きな分、顕著に感じてしまったのです。

王道の謎解きミステリーとしては非常に良くできた作りで、矛盾点はない素晴らしいトリックだとは思います。

ただその分、現実的で実際にありそうすぎて、小説としてはイマイチに感じてしまったのかもしれないです。

動機に関しては「冷たい密室の博士たち」は非常に共感できるものでした。

「すべてがFになる」では動機に関しては天才ならでは。というもので、理解不能な読者もいると思いましたが「冷たい密室博士たち」では動機が完全に読者目線に合わせにきてくれていました。

身近でわかりやすい愛情というものが今回は絡んできたのです(これ以上言うとネタバレになりそうなので、このくらいで言い留めておく)

なので、読みやすさや理解しやすさでは「冷たい密室と博士たち」に軍配があがります。

万人受けするなら「冷たい密室と博士たち」

ミステリー好きになら「すべてがFになる」と言ってもいいでしょう。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

ネタバレ解説

ここからは密室トリックの核心に迫る表現もあるような超ネタバレな話を含んだ感想について書いていきます。

ネタバレが嫌な方はまとめまで飛んでください。

では、ネタバレが平気な人に向けて書いていきます。

今回のトリックは、宇宙服のような防寒服を巧みに使った人間入れ替えトリックでした(初っ端から思いっきりネタバレしていくスタイルですw)

読んだ方も、まだだけどネタバレを見ている方もこのトリックをどう思うでしょうか。

僕の印象はやはり驚きに欠けるもの。もうやり尽くされているものだという印象でした。

また共犯者がいるということで二重トリックで普通の人間入れ替えトリックに毛が生えた状態になってはいるのですが、それでもやはり驚きは少なかったです。

決して僕が推理できてしまったわけではないですが、ある程度犯人の目星もついてしまいました。

学生が犯人じゃないだろうことはコンパが行われる雰囲気でわかってしまったのです。

コンパが今回アリバイになったせいで密室が造られていました。

教授の表情が実は伏線というのも伏線回収としては美しさに欠けると思います。

ともあれ、密室トリックとしてのできは非常に現実的なのは良かったと思います。

あり得ない方法、おおよそ現実的ではない糸を使ったトリックなどではなかった点は良くできた密室トリックです。

前章でも書きましたが、万人受けする綺麗にまとまったミステリーという印象が非常に強いです。

僕としては「すべてがFになる」くらいの衝撃的なトリックの方が好みでした。

なんせ、妊娠によるトリックは僕の想像をあまりにも超えてくれたのですから。

若干僕の目が肥えてしまったのも原因かもしれません。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

まとめ

色々悪く言ったりもしましたが、総合すると「冷たい密室と博士たち」は万人受けする非常に綺麗にまとまった密室トリックミステリーと言えます。

犀川と西之園とのラブもちょっとだけありますので、恋愛が好きな方はミステリーと共にキュンとなれるでしょう。

僕としてはラブは求めていないので、「あっそーー」という感想ですが、見てて悪いものではないです(素直に良いとは言いたくない変なプライドですw)

僕としては「すべてがFになる」の続編ということでかなりハードルを上げて読み始めたので若干の残念感がありましたが、ミステリーとしては良くできていました。

続編はまだまだあるので、そのうち「すべてがFになる」よりも衝撃的な作品に出会えることを切に祈っています。

調べることもできるでしょうが、先入観なしで自分の目で良し悪しを決めたいです。

ここまで色々感想を述べた僕が言えた義理ではないが。。

皆さんも僕の感想を無視して、むしろ疑って「冷たい密室と博士たち」を読んでもらいたいです。

僕を論破するなり、ここが良いのにお前はわかってない!とか意見もらえると嬉しいです。

僕は自分が否定されるほどの意見がむしろ好きなのです。

決してMではないんですけどね。

自分と違う意見というのは非常に興味深くて面白いと思います。

ぜひ、一緒に語り合いたいです。

Twitterなどでも発信しているので、DMなりコメントで熱く語り合いましょう。

では皆さん、「冷たい密室と博士たち」の密室を解いたその先でまたお会いしましょう。

冷たくなる前にまた僕のブログに足を運んでください。

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冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
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