実在する切り裂きジャックこと、ジャック・ザ・リッパー。
参考にする小説は数多くあれど、今回紹介する中山七里さんの「切り裂きジャックの告白」は一味違います。
現代版切り裂きジャックでは終わらず、現代の悩みの種でもある臓器移植を絡めているのです。
この記事では、そんな考えさせられる「切り裂きジャックの告白」をあらすじから、一部ネタバレ要約まで紹介していきます。
では、いってみましょう!

あらすじ

東京都内の公園で、臓器をすべて取り除かれた女性の死体が発見された。
事件を追うのは、犬養隼人刑事。
やがてテレビ局に「ジャック」と名乗る犯人から声明が送りつけられる。
その直後、今度は川越で会社帰りのOLが同じ手口で殺された。
被害者二人に、わかりやすい接点は見当たらない。
犬飼は捜査を進める中で、臓器移植という共通点を見つける。
そこから事件は大きく動き、ジャックとの熾烈な攻防が始まる。
果たしてジャックの正体とは?ジャックの本当の狙いとは?
本書の概要

ページ数
解説含めず349ページ、全355ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
犬飼視点と容疑者目線の二つの視点で三人称視点で書かれた文章でした。
文体は明瞭かつテンポがよく、グロテスクな表現もうまく気分が悪くならないレベルに抑えられていました。
ただ登場人物の名前の読み方が難しいので、注意は必要です(最初に出てきた時に読みかなはフラれているけど覚えられない)
書評(ネタバレなし)

「切り裂きジャックの告白」の感想を一言で表すなら、この事件からどうして感動させられるんだ!!!です。
残忍な事件で、胸糞も悪ければ、犯人の意図もわからない。内容だったものがラストには心動かされてしまいました。
しかも残忍な理由にも理解はできませんが納得はできるという素晴らしい締めくくり。
読みやすいのに、面白い。ワクワクするのに、感動する。イライラするのに、素晴らしいラスト。
どれを取っても文句のない綺麗な話になっていました。
ただ、とにかく名前の読み方が難しい。
実在しない人物にしようとするあまり、難しい名前の読み方で僕は最後まで読み方を覚えることができないキャラクターも多数存在しました。
そこだけは読みにくさにつながってはいましたが、他に文句はなかったです。
テーマもただの猟奇殺人かと思いきや、臓器移植という真相につながる部分も良かった。
考えさせられる内容で、読者に投げかけるのも読んで良かったと思える点でした。
若干グロ注意ではありますが、大いに読んでもらいたいです。
おすすめ度

中山七里さんの「切り裂きジャックの告白」のおすすめ度は5点満点中4点です。
ぜひとも読んでほしいという評価になります。
ストーリー展開が素晴らしく、飽きずに最後まで読み切れると思います。
ただグロテスクな表現があったり、伏線がとんでもない!ってわけではないのでグロいのが苦手、小説はとにかく伏線が命!という方には合わないかもしれないです。
最終的な驚き具合的にも、あーまぁその犯人に落ち着くかなぁという感じでした。
意外すぎる結末ではないのはちょっと残念ポイントですかね。
とはいえ、最後までの話の持ってきかたと過程、人間の心理描写と動機がとにかく良かったです。
なので、ぜひとも読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの要約・あらすじをやっていきます。
第一の事件として女性の遺体が発見されました。
遺体は切開されており、内臓はすべてなくなっている状態で見つかる惨殺事件として捜査が開始されました。
さらに、その事件の直後にジャックと名乗る者からテレビ局へ声明が送りつけられたのです。
警察を挑発するような文章で、警察の士気は高まります。
そんな中、犬養隼人刑事が捜査に抜擢され、犬養視点で物語は進んでいきます。
まずは被害者関係者に話を聞くも、手がかりが見つからずにいる中、第二の事件が発生しました。
第二の事件も遺体の状態は同じで、ジャックの犯行であると断定します。
切開の状況から医療関係者だとはわかるものの、なかなか被害者の関係性が見つからない。
そんな中、犬養隼人は娘が臓器移植をしようとしているという経緯もあり、臓器移植が関連しているのではないかと睨みます。
確かに臓器移植をしているという点、さらにおそらく同じ人からの臓器移植であるというのが判明し、事件は動き出すかと思いきや。
臓器移植をした人物を警察に教えることはできないと、個人情報を盾に断られてしまいます。
上を通して無理矢理にでも情報開示させようとしている中、第三の事件が発生してしまうのです。
警察は被害者の関係がわかったのに何をしているんだ。という批判を受けながら、ようやく臓器移植を受けた最後の一人を知ることができました。
張り込みと警備をつけ、様子を見る中、最後の一人にジャックから連絡が入ったのです。
最後の一人である青年は、ジャックの指示に従い電車を使い警備を振り切り、ジャックの指示通りの場所に行くとそこにはジャックが…
ジャックは手に持ったメスで襲ってくるも、なんとそこに先読みした犬養刑事が現れジャックを取り押さえます。
犯人は、犬養もよく知る娘の担当医でした。
臓器移植をした際の医療ミスを隠すためという動機がわかるものの、犬養は釈然としない部分がありました。
さらに追求していく中で、真犯人は担当医の妻だということがわかりました。
妻こそが医療ミスを犯し、臓器移植で発生した医療ミスを隠すために惨殺を実行したのでした。
夫である医師は妻を庇うために、ジャックのふりをして捕まったのです。
真犯人がわかり、臓器移植をした最後の一人も生き残り事件は幕を閉じました。
臓器移植について考えてみた(ネタバレあり)

「切り裂きジャックの告白」は惨殺事件の裏に臓器移植が深く関わった物語でした。
臓器移植をする際、臓器自体は脳死判定された人物から取ります。
脳死が果たして本当に人の死だと言えるのか。
体は生きている人物から臓器を取って自分のものにしてまで、生きたいと思うのか。
実に根深い問題だと思います。
僕の個人的な意見としては、臓器移植をしてでも生き延びたいですし、生き延びてほしい。と思う反面、自分自身の臓器はあげたくない。というわがままな主張です。
自分の臓器はあげたくないというのは、僕の臓器は決して優秀ではないというのと死ぬ時は体と一緒に死にたいという思いから。
だけど臓器が欲しいというのは、少しでも生きながらえてやりたいことをやりたい。からです。
完全に自分勝手な意見ですが、僕はこう思います。
もちろん、もらうならあげるべき。もらってでも生きる価値がお前にあるのか。と言われればその通りですが、僕自身は臓器移植について考えた時の答えはこういったものでした。
僕の本質はかなりわがままなんだと思います。
生きることができるならば、少しでも多くの人が長く生きて欲しいと思います。
まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。
今回は中山七里さんの「切り裂きジャックの告白」を紹介してきました。
とにかくストーリー展開がうまい作品で、しかも動機と心理描写で感動させられるのが良かったです。
グロテスクな事件であるので若干人を選ぶかもしれませんが、表現は比較的穏やかなのでぜひとも多くの方に読んでほしいと思います。
中山七里さんの作品にハズレはないですね。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

