ゼロサムゲームをご存知でしょうか?
元々の意味とは異なりますが、一般的にたった一人の生き残りだけが手にできる報酬というテーマのサバイバルゲームのことです。
バトルロワイヤルといった方がピンとくる人も多いかもしれません。
今回紹介する貴志祐介さんが描く「クリムゾンの迷宮」は火星をモチーフとした場所で行われるバトルロワイヤルゲームの小説です。
バトルロワイヤル特有のドキドキ感を楽しめる小説となっています。
この記事では、あらすじから、書評、要約、一部ネタバレありの解説について実施していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
この世のものとは思えない異様な光景の中で、目が覚めた。
藤木芳彦は、全く身に覚えのない場所にいる。傍らに置かれた携帯用ゲーム機がメッセージを映し出す。
「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」
その場所には、同じく身に覚えながない人が集められていることを知る藤木。
そして、ゲームとは生き残りをかけたゲームということを知る。
人と人が生き残りをかけて争い、時には協力する、ゼロサムゲーム、バトルロワイヤルの原点と言うべき傑作長編。
果たして藤木は生き残ることができるのか?
ゲームの裏に潜む影とは果たしてなんなのか?
一体どういう理由で、このゲームは行われているのか?
ホラーサバイバルゲーム、きっとあなたは読む手が止まらなくなる。
本書の概要
ページ数
文庫サイズで、全393ページです。
読むのにかかった時間
テンポが速く、セリフも多めなので読みやすく、約3時間半ほどで読み切ることができました
構成
藤木という視点を説明する三人称で書かれています。
情景描写もありますが、直接ストーリーとの関係は少ないです。
蛇や植物といった部分でカタカナの固有名詞が出てきますが、覚える必要はなく藤木が思い出すかのように説明してくれます。
ゲームの行方を眺めるという視点で、読者は楽しむことができます。
心理戦、肉弾戦が描かれている作品です。
書評(ネタバレなし)
「クリムゾンの迷宮」を一言でまとめると、もっと読みたい!です。
「クリムゾンの迷宮」の登場人物は藤木含めて11人しかいません。
ですので、長編やバトルロワイヤルといっても、戦う描写が少なくなってしまうのです。
どうやって置かれた状況を打破するかという部分が大目に描かれていて、バトルロワイヤル+サバイバルという位置付けだと思います。
単純にバトルロワイヤルやゼロサムゲームを楽しみたいという方は、ちょっと物足りないかもしれません。
ですが、物足りないと思うのは、ゲームの設定や登場人物が魅力的ということでもあります。
ゲームの設定はわかりやすく、徐々に明るみになる真実も実にシンプルで読みやすいんです。
だからこそもっと読みたい、人数を増やしてバトルをより過激に、より複雑にしても良いほど読みたい気持ちにしてくれるのです。
11人でも十分面白いのですが、もっと多ければより楽しめたと思います。
ゲームの理由づけやゲームの進行についても実に見事で、バトルロワイヤルとしてよくできています。
主人公が強いとか、特別頭が良いというわけでもないのも良かったです。
どうやって劣勢から逆転するのか、自分に置き換えながら考えることができますし、主人公藤木のとった行動にすごいなぁという感想ももてます。
心理戦と肉弾戦のバランスも良く、「クリムゾンの迷宮」は確実に名作です。
かなりグロテスクなシーンや、人によっては受け入れられない部分も描写として描かれているので万人にはおすすめできません。
ホラー要素や多少のグロテスクなシーンも平気という方は、楽しめる作品だと思います。
ホラー要素は驚かせる系ではなく、ゾクゾクする系で夜読むと眠れなくなるほどの作品です。
そういった要素を理解した上で読むことをお勧めします。
ちなみに、濡れ場シーンもあるので、期待しても良いかもしれません笑
おすすめ度
「クリムゾンの迷宮」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
バトルロワイヤル系、SF小説としては面白いんですが、現代のバトルロワイヤル慣れしている方には合わないと判断します。
戦って勝ち残る。というよりきっちり生き残る、サバイバル色が強い部分も多いのでバトル好きにはラスト近くまで読める粘り強さがないと厳しいかもしれないです。
ただ、ラストにかけての怒涛の展開は非常に面白いのでぜひ読んでほしいですし、実際読み始めたらラストまで手が止まらなくなると思います。
濡れ場シーンもぜひ、楽しみに読んでみてください笑
ネタバレありのあらすじ
ここからは、ネタバレを含む内容となっていますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありのあらすじからお話ししていきます。
まずはゲーム開始から、ゲーム終了までの流れについてまとめます。
・藤木が火星と思しき場所で目覚める
・藍と名乗る女性と出会う
・チェックポイントと呼ばれる場所を目指すゲームだとわかる
・第一チェックポイントに行くと、他9人の男女がゲームに参加中だとわかる
・第二チェックポイントは東西南北に分かれていて、それぞれ「食糧」「武器」「サバイバル道具」「情報」となっている
・藤木は「情報」の道を選択し進む
・藤木たちがいる場所が火星ではなく、オーストラリアであることがわかる
・11人はバラバラにそれぞれのチェックポイントを目指すことにする
・チェックポイントを通りながら、サバイバルをしていく
・久々にあった食糧を選んだチームの様子がおかしいことに気づく(たまたま遭遇)
・彼らが空腹と薬物投与によって人食を始めていることを知る
・食糧チームが鬼となり参加者をどんどん殺し、食べていることがわかる
・食糧チームから逃げながら、食糧チームを打倒するべく行動する藤木
・最終的には毒蛇の巣に逃げ込み、食糧チームを打倒することができる
・だが蛇の巣から出るときに藤木は毒蛇に噛まれてしまう
・目が覚めると病院にいてのちに500万円をもらうことになる
・実は行動を共にしていた藍は、ゲーム主催者側の人間でその左目はカメラとなっていた
・ゲームの真相はスナップビデオであり、ゲーム自体が売り物として出回るものだった
・藍にもう一度会いたいと思う藤木は、藍を探すべくゲームについて調べる決意を固める
以上が、完結までのあらすじになります。
藍と藤木は最初から最後まで行動を共にしており、最終的に生き残った二人となります。
ネタバレありの解説
ネタバレありの解説をしていきます。
結局生き残ったのは藤木と藍ということでした。
藍はさらに主催者側の人間で、左目が義眼、精巧なビデオカメラになっていたのです。
最初から藍はeye(目)として動いていたという結末になります。
藍が時々つまずいていたり、左からの反応が遅かったりするのは左目がカメラのため距離感が掴めなかったり、視野が狭くなっているための伏線でした。
また体の一部が昔奪われたという話も実は補聴器だと思われた左耳ではなく、左目という話でした。
最初からわかるようなヒントがあるものの、まさかカメラという発想はありませんでした。
死体を食い入るように見てたのもカメラでゲーム主催者側に送っていたためだとわかります。
最初に出会った美女が実は、主催者側というのはありがちと言えばありがちですが、カメラマンというのは中々わからない部分でした。
ゲーム自体も薬物で無理やり鬼を作るというやり方で、かなり現実に即しつつエグい話になっていて良かったと思います。
現実にありそうで怖いという面が強い作品です。
まとめ
今回は貴志祐介さんの「クリムゾンの迷宮」について紹介してきました。
ゼロサムゲーム、バトルロワイヤルということでかなりドキドキハラハラを楽しめる作品だと思いました。
サバイバルという面が大きいため、肉弾戦や心理戦は少なめに感じるかもしれません。
とはいえ、ゲームの設定やゲームの流れは見事であっぱれでした。
心理戦やバトルロワイヤル系が好きな方にはおすすめです。
グロテスクなシーンやちょっぴりHなシーンも出てくるので、年齢は考えた方が良いかもしれません。
そこまで直接的な描写はありませんので気にしすぎるほどではありませんが。
自分だったらどうするかを考えながらぜひ、読んでみてください。
では、皆さんが生き残れることを祈っています。
コメント