死を前にして、あなたは最後に何のおやつが食べたいですか?
今回紹介するのは小川糸さんの「ライオンのおやつ」です。
余命宣告を受けた主人公の最後を描いた作品。
涙無くしては読めない一冊をこの記事では、一部ネタバレありで紹介します。
死に真っ向から挑む一冊は、僕の涙腺に響きました。
では、いってみましょう!

あらすじ

人生の最後に食べたいおやつは何ですか?
若くして余命を告げられた主人公の雫。
残りの日々を「ライオンの家」と呼ばれるホスピスで過ごすことを決め、本当にしたかったことを考える。
「ライオンの家」では毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが雫は中々選べずにいた。
食べて、生きて、この世から旅立つ。
全ての人にいつか訪れる温かいストーリー。
今の大切さがよくわかる作品です。
本書の概要

ページ数
全276ページでした。
読むのにかかった時間
大体3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
主人公である雫を主軸とした一人称の文体でした。
最後には他の方の視点も紹介され、その後の世界が語られます。
おすすめ度

小川糸さんの「ライオンのおやつ」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
自信を持っておすすめできけど、人を選ぶかも?という評価。
正直かなり厳しく評価しています。
僕としては感動する内容で、涙腺を刺激された作品でしたし多くの方も感動できると思いました。
ただ、どうしても命を扱うだけに天国であるとか宗教的な考えが入ってくるところがあります。
そこで人を選ぶかも、人によっては命が軽すぎると不快に思うかも。と感じました。
安い感動。と呼ばれても仕方ない描写もあったりし、手放しでおすすめはできないかなと思った次第です。
僕は本当に感動し、今を生きる大切さを感じられて良い作品だと思いましたが、万人が同じ感情を持ち、今を大切にするというメッセージを受け取れるかというとそうではないと思いました。
読みやすくページ数も少なめなので、迷っているなら読んで欲しいです。
厳しく評価しても、4点を超える評価の高さと、しっかりとした起承転結で読みやすい作品なので。
書評(ネタバレなし)

「涙腺弱くなったのか、この小説が心に訴えかけるのが上手いのか?わからん」が僕の正直な感想です。
何度も僕は「ライオンのおやつ」の中で、感動してしまいました。
正直、そこまで感動するような場面でも感情移入ができるキャラでもないのについつい感動してしまうんです。
果たしてこれは僕が感動しやすくなってしまったのか、それとも小説自体が短い話の中で感動を巻き起こすのが上手いのか。僕にはもう分かりませんでした。
主人公が死に向かっていく場面もハラハラしつつも、心を締め付けられ、さらに他の入居者の死。
分かりやすく、先の展開がわかっていながらも感動するし、涙腺を叩かれる。
こんな体験は初めてでした。
人によっては安い感動である。と断じてしまうのでしょうが。
僕は小説のせいなのか、僕自身が弱いせいなのか分かりませんが、感動してしまいました。
ぜひ、皆さんも自身の目で、この小説がすごいのか、僕が弱いのか確認してみて下さい。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにして下さい。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじをやっていきます。
雫は癌による余命宣告を受け、「ライオンの家」にやってきました。
「ライオンの家」はホスピス施設で、余命宣告を受けた人たちを受け入れ、最後の時を思う存分に楽しんでから迎えて欲しいというコンセプトです。
そんな「ライオンの家」には毎週日曜日におやつの時間と呼ばれる、入居者がリクエストしたおやつが1つだけ出てくるという習慣がありました。
雫はどんなおやつにしようかと迷い、すぐにリクエストを行うことはできません。
「ライオンの家」での生活は雫のこれまでの闘病生活とは全く異なり、コーヒーを飲むのも自由、ワインを飲むのも自由、犬と一緒に寝るのも自由というものでした。
とにかくやりたいことは受け入れられ、最後の時を味わい尽くして待とうというコンセプトでした。
雫は「ライオンの家」での生活の中で、お粥の美味しさや今を生きる重要性、死との向き合い方などを改めて感じ、「今を大事にしよう」と決意します。
そんな中、顔見知りの入居者の死や、だんだんと動かなくなっていく体、唯一の楽しみであった犬との散歩もできなくなってしまうのです。
鎮痛剤で何とか、苦しさを抜いてもらうものの、起きていることすら危うくなっていきます。
そして、夢か現かわからない中、子供の時に亡くなった両親にあったり、死んでいった顔見知りの入居者と会話したり、死が目前にやってきました。
そんな最後が近づいた雫のリクエストが、日曜日に叶いました。
雫がリクエストしたのは、亡くなった両親の代わりに自分を育ててくれた、母の双子の弟である「お父さん」のために作ったミルクレープでした。
やっと自分のリクエストが叶った喜びを感じていると、目の前に「お父さん」が現れます。
自分の病気のことも、居場所も伝えていなかったので、生き霊かと思いましたが本物の「お父さん」でした。
最後の最後に見つけ出して、会いに来てくれたのです。
そんな「お父さん」は再婚し、中学生になる子供がいることを打ち明けます。
再婚は認めつつも、嫉妬してしまっていた雫でしたが、妹の存在を知り会うことにします。
どことなく自分にも似ている妹(正確には従姉妹)
最後の最後のサプライズに歓喜し、二人に自分は体が不自由となってしまい食べられないミルクレープを食べるように勧めます。
美味しいと笑う二人をみて、笑う雫。
そうして、未練のなくなった雫は息を引き取りました。
雫の妹である梢は、雫の死を聞いて、悲しいものの実感がしづらいと感じていました。
だって、空いている席に雫の姿が見えるから。
最後に雫の好きな鍋を一緒に取り囲んでいると確実に感じているのです。
雫の笑顔を見ながら、「お父さん」も含めた家族で雫の話をする。そんな時間の中、梢は雫の優しさに触れ、ミルクレープを「お父さん」のために作ってあげようと決意します。
ミルクレープは雫が「お父さん」のために作った、誕生日プレゼントであり思い出のおやつ。
雫はそのミルクレープが梢の中で、ひとつの雫の存在になったことを嬉しく思ったことでしょう。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心して下さい。
今回は、小川糸さんの「ライオンのおやつ」を紹介してきました。
安い感動と言われるかもしれませんが、僕はシンプルに感動しました。
今を大事にする考えも素敵でした。
僕も今を大事に今生きている感動を味わいながら生きていきたいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

