ファンタジーとミステリーの見事な融合。
今回紹介するのは米澤穂信さんの「折れた竜骨」下巻です。
上巻の紹介は前回の記事を読んでみてください。
この記事では、「折れた竜骨 下」のあらすじ紹介から、一部ネタバレありの要約・解説を行っていきます。
記事内では上巻のネタバレを含みますので、注意してください。
では、いってみましょう!
上巻のあらすじ(上巻のネタバレあり)
ソロン諸島の物語。
ソロン諸島の領主であるアミーナの父は暗殺騎士によって殺された。
暗殺騎士の手口は、ある人物を催眠術のような魔術にかけて、殺した記憶すら無くして実行させるものだった。
アミーナと暗殺騎士を追ってソロン諸島にやってきていたファルクは、暗殺騎士によって操られて領主を殺した犯人を追う。
そんな中、小ソロン島とソロン島の二つの島で構成されるソロン諸島は、夜になると船でしか行き来できず領主が殺された日に行き来できる船はないと思われた。
が、実は潮の満ち引きの関係で、歩いてソロン島から小ソロン島に行くことができることがわかったのだ。
ソロン島にいた人物にも犯行が行えることがわかり、さらに小ソロン島に幽閉されていた不死身のデーン人がいなくなったことがわかる。
果たして、領主を殺した人物とは。暗殺騎士を捕えることができるのか。
下巻のあらすじ(ネタバレなし)
ソロン島と小ソロン島が行き来できることが証明され、小ソロン島に幽閉されていたデーン人(トーステン)がいなくなっている事実が明らかになり、ファルクとアミーナはさらに聞き込みを続ける。
そんな中、領主であったアミーナの父が生前に言っていたデーン人が攻めてくる。という予感が的中する。
デーン人はソロン島に乗り込んできて、住民を惨殺していく。
さらに、用心棒たちに怪しい動きをするものが現れる。
さらにさらに、いなくなったトーステンもアミーナの前に現れる。その目的とは。
果たして、アミーナとファルクは領主を殺した犯人に行き着くことができるのか。
暗殺騎士に辿り着くことができるのか。
本書の概要
ページ数
解説・あとがきを含めず253ページ。全264ページでした。
上巻と合わせると554ページです。
読むのにかかった時間
下巻のみで大体2時間半ほどで読み切ることができました。
上巻と合わせて大体6時間ほどで読み切れました。
構成
上巻と同様にアミーナを中心に据えた一人称視点で描かれる構成でした。
書評(ネタバレなし)
「折れた竜骨 下」最後までしっかりとファンタジーじゃん!というのが僕の一番の感想でした。
もしかして魔術自体が実はなくて…とか推理していたんですが、全然違いましたね。
期待しすぎた大どんでん返しだったのかもしれません。
とはいえ、しっかりとストーリーとして意外な結末だったのは非常に良かったです。
まさかあんなオチになるなんて、想像もしていませんでした。
魔術で引っ掛けるのではなく、最後はミステリーで引っ掛ける見事な手法でしたね。
伏線もしっかりとあり、見事すぎるミステリーだと思いました。
ファンタジー要素が強いですが、迷うごとなき「折れた竜骨」はミステリーです。
見事な謎と解決とラスト。全ての伏線が最終的に一本に繋がるのは芸術ですね。
鳥肌が立つほどの伏線回収と大どんでん返しというわけではありませんが、しっかりとした伏線と予想もつかないラストというのが良かった。
初見でこのラストを見破れる人はいないんじゃないかなと思いました。
カタカナで人物名が構成される点は唯一の弱点だったかなと思います。
というのも僕はカタカナの名前がとにかく覚えにくいんです。
なんとか登場人物をおさらいしながら頑張って読み切った形ですね。
人物名以外はもう完璧すぎる話でした。
ファンタジーとミステリーのこんな見事な調和があるなんて。
最後の最後にタイトルの意味もわかるという仕掛けも好感が持てました。
おすすめ度
「折れた竜骨」上下を合わせたおすすめ度は、5点満点中4.5点です。
万人におすすめできるミステリーだと思いました。
ラストのオチも完璧で、伏線もしっかりある。謎がちゃんと答えに繋がる道筋もよかったです。
またグロテスクなシーンも少なめで、戦いのシーンもあるのでワクワク感やスピード感もあってよかったと思いました。
ファンタジー要素があるので、嫌いという方もいるかもしれませんが、現実から飛び出すぎた設定はないので安心して読んでみてほしいです。
僕個人として、どうしてもカタカナ名前が覚えにくかったので満点から点数を落としている形ですね。
完全に僕の好みの問題です。
ファンタジーとミステリーの見事な融合を一人でも多くの方に読んでほしいと思いました。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじを行なっていきます。
デーン人が襲ってきました。
デーン人はソロン島で住人を虐殺していきました。用心棒たちはいち早く現場に駆けつけ戦いました。
アミーナはたまたま事情を聞いている中で、デーン人の襲来に巻き込まれていました。
ファルクとニコラによって、守られながらなんとか屋敷へと戻ろうとする中、ついにアミーナは一人のデーン人が目の前に!
アミーナがやられると思いきや、20年間幽閉されていたデーン人・トーステンがアミーナを助けたのです。
トーステンは自分と同じ種族のデーン人を倒していきます。
そして、用心棒の一人である女・エンマが敵のデーン人の親玉を倒しました。
残ったデーン人は逃げていき、ソロン諸島は生き残ることができました。
トーステンに話を聞き、トーステンの脱走はアミーナの側近が逃がしたことがわかり、さらにデーン人は血が流れないということを知ります。
加えて、トーステンは領主が殺された日に何者かが城から出てくるところを目撃したとのことでした。
はっきりと姿は見えなかったものの、人がいたという事実を聞き、ファルクは関係者全員が集まるところで推理を披露すると言い出すのです。
デーン人を退けたお祝いをする中ファルクが、推理を披露し出します。
容疑者を一人一人除外していく中、たった一人の人物が残りました。
しかし、その人物は絶対に犯人にはなり得ない理由がありました。それなのにファルクはその人物こそが犯人だと言い出すのです。
ニコラはその推理を聞き、指摘します。その人物はデーン人のため犯人ではありえないと。
催眠術で人を操る場合血が必須条件でした。デーン人は血を流さないことがわかっているため、その人物は実行犯であるはずがないとのこと。
そして、ニコラはファルクこそが真の実行犯であると指摘します。
ファルクは不敵に笑い、自分こそが暗殺騎士であると言い出します。
ファルクは剣を取り暴れ出しそうになり、ニコラはファルクに剣を突き刺すのです。
ファルクは亡くなりました。そして事件は幕を閉じ、アミーナはニコラと別れをしつつファルクの本当のメッセージについて聞きました。
デーン人は今回退いたものの、再び来るであろうことがわかっています。
その際は絶対にアミーナを守るとニコラは言います。そして二人だけの秘密の言葉を決めました。
それが「折れた竜骨」です。
小説のタイトルにもなっているこの言葉を見つけたらニコラは、すぐにアミーナの元に戻ると言い残して物語の幕を閉じました。
真犯人についての解説(ネタバレあり)
ここでは真犯人について、本編をふかぼって紹介していきます。
殺人を実行したのはファルクでした。
ただ、ファルクはもちろん暗殺騎士によって操られていたわけでただの実行犯という位置付けです。
しかし、ファルクはニコラによって殺されました。
というのも、ファルクは自身が実行犯であるとわかった時点で死することこそが償いである悟り、「自分こそが暗殺騎士である」と言い出したからです。
その言葉は真っ赤な嘘で、しっかりとファルクは最後まで正義の騎士でした。
ただ、暗殺騎士の手によって操られてしまったわけです。
そんな暗殺騎士はどこへ行ったのか。
正解は、ファルクによって殺されていたというものでした。
ファルクは顎に傷を負っていましたが、その傷の理由を知りません(覚えていない)でした。
実はファルクは暗殺騎士と対面しており、その時にソロンの領主を殺す催眠術(魔術)をかけられており、さらに忘却の魔術もかけられていたのです。
ファルクはその対面時に魔術をかけられながらも、暗殺騎士を殺していました(ニコラの予想)
そのため、領主の殺しを企てた暗殺騎士(真犯人)はすでに死んでいる。
実行犯であるファルクは自分の罪を許せず、弟子であるニコラに殺してもらう形で幕を閉じたわけです。
最後まで正義を貫いたファルクはかっこいいですが、死ぬ必要が本当にあったのかは疑問が残りますね。
まとめ
ここからはネタバレがないので、安心してください。
今回は、米澤穂信さんの「折れた竜骨 下」を紹介してきました。
ファンタジーを突き進み、最後にミステリー要素で読者をしっかりと鷲掴みにして振り回す感じ、最高でした。
是非とも、読んでみてください。
上下巻に分かれていますが長編としては決して長い部類ではないので、読んで損はしません。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
コメント