どうして天皇が偉いのか?
単純な疑問ながら、意外と答えるのは難しいのではないでしょうか。
僕は天皇が嫌いでした。天皇のせいで戦争が起こって、天皇のために多くの人々が戦死したと思っていたからです。
しかし、それは待ってくの勘違い、歴史を何もわかっていない僕のバカな意見でした。
今回紹介する井沢元彦さんの「天皇の日本史」はそんな僕のバカな勘違いを、論理立と事実の流れでわかりやすく解説されていました。
天皇がどうして偉いのかわからない、天皇が嫌い!という方はぜひ一度読んでみてください。
考えが変わります。
この記事では、書評と内容について簡単にまとめていきます。
では、言ってみましょう!
本書の概要
ページ数
全467ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい7時間ほどでした。
構成
初代天皇から平成の天皇までを基本1代ずつ説明していき、どのような改革を行った天皇なのか天皇に即位するにあたりどんなドラマがあったのかを解説する構成になっていました。
血統が重要視される天皇において、家系図が難しくなるところは適宜挿絵で、誰が誰の子供で何代目天皇なのかはわかりやすくする工夫がありました。
天皇はどうして偉いのか?
天皇は偉い。そんな刷り込みが僕らの中にはありますが、改めてどうして偉いのか?と聞かれるとなかなか答えられないのではないでしょうか?
どうして天皇は偉いのか?その答えは天皇は神の子孫であると信じられているからです。
は?
という疑問の顔になるかもしれませんが、それが事実なのです。
神話の話で、イザナミ、イザナギの二人の神がいました。
アマテラスはイザナギの子で、このアマテラスこそ天皇という話なのです。
今の時代で考えると、神が子供を生む?神の子だから偉い?という懐疑の声がでますが、日本が始まった頃はこの通説が有力で実際に神の子孫である天皇は力を持っていました。
そして神の子孫=天皇が確定したことにより、天皇は神の子孫であり、血が非常に重要になってきたのです。
天皇の血を引くもの=神の血を引くものにしか天皇になれない縛りが生まれたのもこの時になります。
この血、血統という考え方こそが天皇のことを理解する上で非常に大事になってくるのです。
天皇は日本独自の考え方
実は、天皇というのは日本独自の考え方なんです。
天皇は日本の中でも偉い立場にありますが、世界を見渡すとこのような立場の人は国王だったりするわけですが、天皇とは明らかに出どころが異なります。
天皇は先述した通り、アマテラスの子孫(神の子孫)ということで血というのは絶対的指標でいくら頑張っても天皇家に生まれなければ天皇にはなれず、国を天皇として治めることもできません。
しかし、世界では国王となるのはその当時一番強い国の長です。
つまり血統に関係なく、強く他の国を力で征服できれば国王には誰でもなれます。
この力ではなく、あくまで決闘という考え方というのが日本独自のものです。
良い悪いに関わらず、このような事実があり実際その独自の考え方によって日本の成長が他国よりも早かったという特徴もあります。
天皇を簡単にまとめると、大昔、大きな国の国王であった存在が神話を作り自分たちを神の子孫=天皇と決めました。
そして、神の子孫であるから血統が非常に重要で神の子孫という話にそぐわない、他の血は決して天皇にはなってはいけない、なれない。という暗黙の認識を作り出したのです。
信じる心によって生まれた天皇という考え方が、長い歴史を作り今の僕たちの世界にも残り続けています。
天皇を嫌うのは筋違い?
僕は天皇が嫌いでした。
なんとなく、戦争は天皇のせいで、天皇のために多くの血が流れていると考えていたからです。
しかし、事実は違いました。
むしろ天皇は戦争を止めたかったのに止められなかったという立場だったのです。
大きくなってしまった天皇という存在を利用した軍部によって、戦争は行われていたという言います。
軍部の教育により、「天皇のために命を投げうて」「天皇の命令だから〇〇」となっていたのです。
膨れ上がってしまった天皇という名前と神々しさによって、おかしなことになっていたのが戦時中でした。
マスコミによって、その考えが広まったりとおかしなことはおかしなことを呼び、今では考えられない神風特攻なども起こったわけです。
また、天皇は国を偉そうに率いていたという印象を持っていたのですが、それもまた間違いでした。
昔から、国を支配したいという人々が出てきて常に頭を悩ませているのが天皇だったのです。
蘇我氏や藤原氏、征夷大将軍など、天皇になれるのは天皇だけという縛りがある中多くの人々が実力で日本を牛耳るために奮闘してきました。
最終的には明治維新により天皇に権力は戻ってきたわけですが、それまでの苦悩は僕だったら胃に穴が空きそうなものでした。
野心家が多すぎて、自分こそが天皇を操って日本を牛耳る。そんな考え方が横行しすぎて怖いと感じました。
ぜひとも、ドロドロした世界、この時代に生まれなくてよかったと思える世界をご自身の目で確かめてほしいです。
この時代にタイムスリップしたら、確実に1週間で胃に穴が空いて、1ヶ月で髪の毛が全部抜け落ち、1年で自殺を選択すると思います。
それくらい、壮絶な天皇の座や天下の座を狙う戦いがあるのです。
歴史は事実ベースで冷静に見るべき
井沢元彦さんの「天皇の日本史」を読んで一番感じたのは、歴史は感情で見てはいけないということでした。
例えば、豊臣秀吉の晩年は朝鮮に出兵したことで有名です。
僕はこれを豊臣秀吉が頭がおかしくなって出兵したと考えていました。
ですが、事実は違いました。
日本から離れたところに領地を広げることで、天皇はあくまで広い国の一国王にすぎないとさせようとした企みだったのです。
本社を別のところに作って、日本の天皇は日本支社の社長みたいなことを目指すみたいな形になります。
ちゃんと豊臣秀吉は最後まで考え抜いての朝鮮出兵だったのです。
どうしてこんな勘違いを起こしたのかは、僕が冷静に歴史を終えていなかったという点と歴史を点で捉えていたということでした。
歴史は事実として淡々と流れで追っていくと一気にひらけていく感覚を味わえます。
どうして天皇が偉いのかから始まり、天皇が都を移した理由、道真が祀られるようになった理由、征夷大将軍がどうして生まれたのか。
疑問が解消されていき一本の線になるのです。
これが歴史の面白いところなのかと、社会人になった今感じます。
冷静に見ることで、事実を事実として受け入れながらきっとこうだったんだろうという予想もつくようになるので、本当に井沢元彦さんの「天皇の日本史」読んでよかったです。
価値観がまたアップデートされました。
歴史はしっかりと事実を線で捉えることで理解がうんと深まります。
まとめ
今回は、井沢元彦さんの「天皇の日本史」を紹介してきました。
天皇という一つのテーマで歴史を紐解くことで非常に理解を深めることができました。
歴史は苦手ですが、読んでよかった一冊でした。
これまでの間違った知識をアップデートすることができるとともに、新たな歴史の楽しみ方も理解することができた非常に有用な本だと思いました。
歴史学者の言うこと・教科書が全て事実ではなく、誰かの解釈であるということもよくわかり、常識を疑うことの大切さも改めて学ばせてもらいました。
天皇の話、本当に面白いのでぜひ一度読んでみてください。
では、皆さんの歴史欲が溢れかえることを祈っています。
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