薬物はダメ絶対!
今回紹介する中山七里さんの「ヒートアップ」は、ヒートと呼ばれる架空の薬物をテーマにした麻取の物語でした。
先がどうなる?という展開から、驚きの結末。一気読み必至のミステリー小説になっていました。
この記事ではそんな「ヒートアップ」の書評と、あらすじ内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!
あらすじ
主人公・七尾は、囮捜査も許される厚生労働省所属の優秀な麻薬取締官。
製薬会社が兵士用に開発した特殊薬物「ヒート」が闇市場に流出し、それが原因で起こった抗争の捜査を進めていた。
「ヒート」は接種した人物の闘争心を掻き立て痛みや不安がなくなり、凶暴性が爆発する効力があった。
中学生などの子どもたちに広がりつつある薬物を追う中で、山﨑というヤクザから「一緒に手を組もう」と言われる。
さらに、事件を追う中で起こった殺人事件に残されていた鉄パイプから七尾の指紋が採取され、七尾は警察に捕まってしまう…
果たして事件の結末とは?
興奮の先に待つ驚きの結末とは?
本書の概要
ページ数
解説含めず390ページ、全397ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
主人公である七尾を中心に据えた三人称で書かれる文体でした。
時々七尾以外にもフォーカスが当てられ、違う視点も描かれることで七尾がどれほど特殊な人間で事件全体の理解しやすさがアップする構成になっていました。
書評(ネタバレなし)
薬物こえーというのが僕の一番の感想でした。
麻取が主人公ということもあり、薬物の話が中心になっています。
ミステリー要素も詰まっていて最後にはきちんと謎解きがあるのも魅力でしたが、とにかく薬物が怖い!
さらに薬物の怖さからどうなるかわからないワクワクする興奮展開も実物でした。
どうやって追い詰められた状況から打破するのか、目が離せなくなる一気読み必至の内容にまとめられていました。
「ヒート」と呼ばれる架空の薬物がテーマの中心になっているのですが、この薬物がまたリアルでありつつフィクションであり、怖さを引き立てているのです。
簡単に説明すると「ヒート」を接種したものは自我を失って凶暴化します。
この凶暴化によって人とは思えない超人的な力で、人を遅い半殺しにしてしまうのです。
この表現部分がとにかく怖かった。
腕が折れるシーンや手も足も出ない暴れっぷりが忠実に表現されていて、息を飲みました。
この表現があるからこそ、ラストシーンあたりの展開は興奮がさらに増すんですがそれはぜひとも読んで確かめてみてほしいです。
一応ミステリーとは言っていますが、正直ミステリー要素は薄めかなという印象でした。
最終的に謎解き要素も含まれてきてはいますが、なんとなくそうだったんだーという感じ。
それまでの興奮する展開からのおまけ要素的な楽しみ方になってしまいましたね。
謎解き要素としては驚けるものなのですが、それまでの興奮が大きすぎましたね。
ミステリーとしては根拠や伏線が弱い印象でした。
アクションものとしては非常に面白く手に汗握る展開に興奮しっぱなしでした。
おすすめ度
「ヒートアップ」のおすすめ度は5点満点中3.5点です。
ミステリーとしてはもう少し伏線やら、助走が欲しいという印象ですがアクションものとして非常に評価が高いと思いました。
多少グロいシーンや薬物乱用のシーンが入っていたりするので、読む場合は注意が必要ですが、薬物が怖いやってはいけないとより一層わかるという観点から中学生あたりから読んで欲しいと思いますね。
アクションとしても面白いですが、薬物はダメというのがよくわかる内容でした。
ミステリーが奥深くて読み応えがあって、頭を使いたいという方にはいまいちおすすめできませんね。
中山七里さんの他の作品の方がミステリー要素は強くて、とんでもない伏線とどんでん返しがある作品は多いですから。
個人的には「カエル男」なんかの方がおすすめです。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
主人公・七尾は「ヒート」の捜査を始めました。
ただ「ヒート」の売人である仙道は慎重な男で、居場所も受け渡しにも入念の注意が払われ尻尾を掴めないでいました。
そんな中、ヤクザのNo.3である山﨑からコンタクトがあったのです。
「ヒート」を撲滅する共通の目的のために手を組もう。という内容でした。
悩んだ末、七尾は山﨑と手を組むことになりました。
山﨑は七尾へ正確で素早い情報を与えてくれました。
山﨑の情報をもとについに仙道を捕まえられるか?となったタイミングでなんと、仙道は殺されてしまうのです。
しかも仙道を殺した武器と見られる鉄パイプからは七尾の指紋が。
身に覚えがないものの、七尾は警察に捕まってしまいます。
警視庁へ護送されるタイミングで、山﨑は七尾を奪還するのです。
山﨑は七尾が警視庁に連れてかれてしまうと、「ヒート」の調査が続けられなくて困るという点から強行手段に出ていました。
二人は、仙道が最後に口にしていた調合者(ヒートを作って仙道に渡していた人物)を探しつつ、仙道を殺した人物を突き止めるため動き出しました。
ですが、二人はお尋ね者になっており警察からもヤクザの仲間からも逃げなければいけない状況になるのです。
そこで七尾が潜伏先として選んだのが「ヒート」を元々製造していた製薬会社の跡地でした。
製薬会社の跡地は2ヶ月前に焼き払われ、政府が立入禁止区域としていた場所だったのです。
そこにいけば「ヒート」の情報がわかるとともに、立入禁止区域だからおっても入って来れないと考えました。
実際に行くとそこには「ヒート」の実験により凶暴化した野犬が存在し、命からがらなんとか生き残っていた地下室へとたどり着く二人でした。
そこにいたのは一人の研究員で、その研究員はヒートの解毒薬を探すため地下室に来たのだと話しました。
二人はその行動のおかしさから、仙道の裏で「ヒート」を作っていた人物がこの研究員であることを看破しました。
そんな中政府からの爆撃が始まったのです。
製薬会社の跡地は、アメリカからすれば「ヒート」というとんでも薬物の秘密が詰まった場所だったため爆撃することにしたのでした。
爆撃の中なんとか七尾と山﨑、研究員は脱出することができ、七尾は仙道を殺した犯人の元へと向かいました。
犯人はなんと、麻取の課長だったのです。
ヒートは、仙道が死に、研究員の身柄を確保したことで落ち着き、仙道を殺した犯人も明るみになり事件は解決したのでした。
犯人の解説(ネタバレあり)
犯人が課長と聞いて、実際に「ヒートアップ」を読んでいた方は驚いたのではないでしょうか。
仙道を殺す描写の時に「麻由美」という名前が書かれていました。
「麻由美」という名前から女性が犯人だろうということが推察されますが、実は明確に女性であることが言及された人物がいなかったのです。
課長もまた篠田課長という書かれ方で、言動はもちろん下の名前も出てきませんでした。
まさか篠田課長が女性で「麻由美」という名前だったなんてというのが、最後の最後でわかる仕掛けが「ヒートアップ」には仕掛けられていたわけです。
伏線として、確かに男性であるとか女性であるとかの言及はもちろんなく、発言についてもどっちとも取れる表現で描かれているのです。
まさにうまく性別を隠したトリックだったというわけですね。
未読の方は犯人が分かった上でもう一度読んでみると、中山七里さんのうまさがよくわかると思います。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は中山七里さんの「ヒートアップ」を紹介してきました。
タイトル通り、読んでいるこっちが見事にヒートアップする内容でした。
さすが中山七里さんというところで、ミステリーとしてもしっかりと伏線と驚きがあり、素晴らしい出来だったと思います。
ぜひとも一度読んでもらいたいです。
ワクワクからの驚きがある良い作品だと思います。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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