あなたは解剖に肯定的ですか?
では、もし自分の子供を解剖しないかと言われたらどうしますか?
今回紹介する中山七里さんの「ヒポクラテスの誓い」は法医学者の話。
解剖を通して、遺体の気持ちを汲み取るそんな話でした。
この記事では、そんな「ヒポクラテスの誓い」のあらすじから、書評、おすすめ度、一部ネタバレありの内容要約を行っていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
浦和医大・方医学教室に研修医として入った・栂野真琴(つがのまこと)
彼女を出迎えたのは、偏屈者の法医学の権威・光崎藤次郎教授と死体好きの外国人准教授・キャシーだった。
法医学教室では、解剖が行われ、投資や事故死など、一見事件性のない遺体を解剖することで本当の死因を見つけ出していた。
そんな中、遺体を強引にも解剖に持ってきて事件を解決していく光崎の行動が問題視されていく。
この行動にはとんでもない、裏の事情が隠されていたのだ。
迫真の法医学ミステリー、ここにあり!!
本書の概要
ページ数
解説含めず、369ページ、全378ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
分類としては短編集になりますが、最終的にはそれらの短編が一つにつながるので、一概に短編集と断ずることはできない一冊でした。
三人称視点で描かれ、栂野真琴が主人公として描かれています。
ただ、探偵役は別で犯人が特定されるミステリーというよりかは、謎の現象や行動が最後に明るみになる系のミステリーでした。
書評(ネタバレなし)
短編だったのに、長編だったのかーい!には驚きましたが、正直他の作品の驚き系が僕の好みだった!というのが正直な感想です。
1話1つの遺体を解剖して、事件の真相を明らかにしていくスタイルで物語は進み、最後にそれらの事件を踏まえた結論的な長編というスタイルでした。
正直一つ一つの短編事件としては弱い印象でしたので、最終的なゴールの長編は良い印象を受けました。
とはいえ、他の中山七里さんの作品の方が僕は好みでした。
やはり僕としては短編で集中を切られるよりも、長編でがっつり物語に入り込んでいきたい派です。
メッセージの強さはかなり好きでした。
生きているものも死んでいるものも等しく患者という考えや、身内だから解剖しないとか感情論で行動を決めないプロフェッショナルな感じはよかった。
キャラも結構好きで、ズバズバ思ったことを言う感じ、権力よりも信念で動くのがかなり好感を持てました。
長編と見た時の最終的な情報まとめもかなりクオリティは高いと思います。
ただ中山七里さんの他の作品を読んできた僕としては、どうしても本物の長編よりもクオリティが下がっている印象を受けてしまいました。
おすすめ度
「ヒポクラテスの誓い」のおすすめ度は、5点満点中 2点です。
ごめんなさい。正直「ヒポクラテスの誓い」を読むよりかは他の中山七里さんの作品を読んでほしいと思ってしまいました。
短編かつ法医学という作品でテンポよく読めるのですが、内容の深み事件の深み、ミステリーの重厚感は他の中山七里さんの作品の方がすごいと思いましたし、読んでほしいのはやはりそういった作品です。
「護られなかったものたちへ」とか「さよならドビュッシー」「総理にされた男」の方が僕の好みで読んでほしい作品。
なので、法医学好きや短編好きではない限り、おすすめは決してしない作品という評価です。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじをやっていきます。
遺体は5つ、事件としては短編4つ描かれたのち、最後の章で長編として事件の真相がわかるという構成でした。
このネタバレの場では事件一つを取り上げ、長編の事件真相について解説要約します。
僕がここでピックアップする事件は、章で言うと2章の加害者と被害者です。
真琴が研修医として法医学教室に来てから二つ目の事件。
法医学教室にかかってきた電話を真琴がとったところから事件は始まります。
電話をしてきたのは一人の少女、なんでも少女の父親が交通事故で女性を轢いてしまったとのこと。
ただ父は最新の安全運転をする人物なので事故なんて、ありえないから遺体を調べてほしいとのことでした。
詳しい話を聞くべく交通課とその少女の場所へと向かいます。
するとそこには操作一課の刑事・古手川もおり、加害者である少女の母からも話を聞き、交通事故にしては怪しい点があるかもしれないと思い始めます。
ただ遺体を解剖するためには親族の同意が必要。
今回は交通事故にあった女性側の両親の同意が必要です。
交通事故で亡くなった、それだけで両親としては十分な理由で最初は解剖提案を跳ね除けていましたが、半分騙す形で解剖までこじつけることができました。
そして実際に解剖を行う光崎。素早い手捌きで解剖を進め、女性は交通事故前にクモ膜下出血によって亡くなっていたと判明したのです。
少女の父親は交通事故の罪から解放され、死者の声によって生者の人生が変わった事件でした。
こんなふうな事件があと4つ起こり、最後の章で多少強引でも光崎が解剖を行ってきた理由が明らかになります。
ズバリ、抗生物質で投与した薬に血栓を作る成分が入っていたことを確かめるためでした。
最初の事件の時点で、血栓を作る成分が入った薬が使われた患者の一人であるのではないかと疑いを持ち、それを確かめるべく警察側に以前患者として処置されたことがある人物だった場合には必ず光崎に連絡するようにしていたのです。
血栓を作る成分の薬を投与していたこと自体は、決して悪意はなく当時適切な処置でした。
ですが、そのことを公表しなかったことが問題となり、世間を賑わせる結果となったのです。
光崎はそれを察しして、ひとまず確証を得るべく解剖の提案をしていたと言うオチでした。
決して自分の損得ではなく、真実を明らかにするために行動する光崎の姿、真琴が改めて法医学教室で働いていく姿で物語の幕は閉じられました。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は中山七里さんの「ヒポクラテスの誓い」を紹介してきました。
短編からの長編という内容で決して面白くないわけではありませんが、評価としては他の中山七里さん作品の方が僕は好きだったというものでした。
医者としてのプロの観点は非常に参考になりメッセージ性に心を打たれました。
気になる方はぜひ、チェックしてみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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