犯人はあなたです。
のような王道探偵ものはお好きですか?
シャーロックホームズのような探偵が出てきて、よくわからない事件の謎をズバッと暴く作品が好きならぜひ、「斜め屋敷の犯罪」がおすすめです。
今回は、名探偵御手洗潔シリーズ、三大傑作のひとつ「斜め屋敷の犯罪」の書評、紹介になります。
ネタバレは極力なく、ネタバレ含む箇所には注意書きしてますので未読の方も安心して読み進めていってください。
あなたの有用な読書体験のための助けになれば嬉しいです。
では、行ってみましょう!
あらすじ
北海道の最北端、宗谷岬の傾いて立つ館、通称「斜め屋敷」が今回の舞台。
雪降る凍える聖夜に館の主人浜本幸三郎はパーティを開いた。招待客も揃い聖夜のパーティは大いに盛り上がった。
だが、楽しい雰囲気もその日までだった。
次の日、招待客の一人が完全密室の状態で部屋の中で死体となっているところを発見される。
人々が恐怖に落ちる中、惨劇は終わらない。第二の完全密室殺人が彼らを襲う。
次は誰なのか。
警察がやってくるも、密室は破れない。悩む警察、恐怖する招待客と館の主人たち。
そこに颯爽と現れるは、名探偵、御手洗潔。
果たして彼の頭脳はこの、完全密室の謎を解けるのか?
また、斜め屋敷に隠された秘密を明らかにすることができるのか。
密室を舞台にした王道の本格推理小説が読者に問いかける。
「材料は完璧に揃っている。ことの真相を見抜かれんことを!」
はっきり言って占星術殺人事件の方が好み
最初に申し上げさせてください。
トリックも含め僕は「占星術殺人事件」の方が今回の「斜め屋敷の犯罪」より好みでした。
「占星術殺人事件」は前半部はかなり読むのがキツく、普通に眠くなりますが、半分から一気に面白さが爆発して読み切れる作品でした。
癖はあるものの最後のトリックに背筋が凍る。
つい、前半部まで読み返して作者の意図に震える作品でした。
ですが「斜め屋敷の犯罪」はそこまでの驚きはなかった作品でした。
今回も御手洗潔シリーズお馴染みの読者への挑戦ということで、途中まで読んだ段階で謎解きを読者自身ができる作りになっています。
「占星術殺人事件」ではなんとか自分の手でトリックを推理できたのですが、「斜め屋敷の犯罪」に関しては全く推理できませんでした。
トリックが明らかになっても、「あーそうだったんだ。すごいねぇ」くらいの反応になってしまいました。
原因を考えると僕に想像力が足りないせいでした。
殺人事件の現場、密室の現場が把握しきれていなかったのです。
今回テーマになっている館の特徴を掴む必要がトリック解決に大いに関係するのです。
これ以上は言えませんが、殺人現場などについて挿絵でわかりやすく表現してくれるのですが、僕はイマイチ覚えられませんでした。
僕には少し難易度が高すぎる謎でした。
なので、自分で推理できなかった、トリックを聞かされてもすごいけど想像の斜め上すぎる。
という感想になってしまい印象が薄くなってしまったんだと思います。
しっかりと現場の様子をイメージできて、挿絵部分をしっかり吟味できる読者なら非常に楽しい読書時間を過ごせると思います。
僕は奇抜なトリック一つで楽しむタイプなので、密室系は少し苦手なのかもしれません。
ただ、密室好きにはたまらないトリックと、超現実的なトリックは健在です。
密室好きの方は自分で解くつもりで読み進めていただければ最高の体験ができる一冊になっていると思います。
大掛かりなトリック好きにはたまらない
ミステリーの醍醐味はやはり、大掛かりなトリックが最後の最後までわからないのに、最終的に聞かされると納得してしまう盲点のような仕掛けがあることだと思います。
「斜め屋敷の犯罪」も例に漏れず、大胆かつ驚きのあるトリックが出てきます。
前章でも述べましたが、トリック自体は「占星術殺人事件」の方が個人的に好みでしたが、「斜め屋敷の犯罪」のトリックも非常に素晴らしいものであることは間違いありません。
館丸々使った大胆不敵なトリックは全てを計算に入れた作者の手のひらで踊らされている感覚を味わうことができます。
伏線もきちんと張り巡らされていて、なんなら実は序盤で犯人を言い当てられてしまう面白い仕掛けまで潜んでいます。
作者の遊び心であり、読者へのキラーパスです。
御手洗の凄さは健在
シリーズの主人公である名探偵、御手洗潔は最後の方にしか出てきません。
まさに謎を解くためだけの存在が今回の彼の仕事になります。
なので御手洗の皮肉や性格の悪い空気を読まない言動は少なめなので、それ目当ての読者は少しがっかりするかもしれません。
そんな発言を目当ての読者がどれだけいるかわかりませんが。
しかし少ない出番ながら、きっちりと謎を一瞬で解いてしまう凄すぎる御手洗は健在です。
いつわかったんだ?こいつ。となること間違いなし。
あまりにも鮮やかかつ狡猾な謎解きにきっと驚きを隠せないと思います。
出番が少ない分皮肉や性格の悪さが出るところは少ないと言いましたが、もちろんそのようなシーンはあります。
なんなら「占星術殺人事件」よりむかつきどは増すかもしれません。
悩んでいる姿がほとんどなく、いつの間にか謎を解いているからです。
あっという間すぎる謎解きに、僕じゃないと見逃しちゃうレベルです。
僕なんかより数百、数千倍頭のいい御手洗なのはわかっていましたが、「斜め屋敷の犯罪」では本当にヒントすらない状態で謎解きされてしまうので、御手洗に勝ちたい方は注意してください。
作者が読者に挑戦したところで、ヒントは出尽くしている状態になります。
「占星術殺人事件」ではその後に御手洗が犯人を連れてくるところでもう一度挑戦文が出てくる余裕がありましたが、「斜め屋敷の犯罪」では一回しか挑戦文は出てきません。
ヒントなしで、御手洗に挑まなければならないのです。
果たして、あなたは御手洗より早く真実に辿り着き、密室を破ることができるのでしょうか?
ネタバレありの感想
ここからは、ネタバレ部、主に密室トリックに関する部分い触れるのでネタバレが嫌な方は注意してください。
ネタバレを避けたい方は次の章のまとめまで飛んでください。
では、ネタバレ含みの感想を書いていきます。
今回のトリック大掛かりな滑り台にナイフを凍らせた氷柱というトリック。
皆さんはどう思いましたか?
僕は正直、すごいよりもへーっていう感想でした。
確かに家の作りを改めてみてみると一直線に密室の現場まで犯人の部屋から続いていますが、こんなの思いつくかぁっという感じです。
このトリックに自分の力だけで気づく読者いるんですかね?
それもうマジで探偵になった方がいいレベルだと思うんですけど。もしいればコメントください。
普通に尊敬します。
トリック自体の発想はすごく面白いと感じましたが、第三の殺人(あえてここでは殺人と呼ばせてください)の日下は正直ずるいと僕は思いました。
日下の被害に関しても絶対犯人の仕業だと思うじゃないですか!?
もうここで換気口を使ったトリックはないだろうとたかをくくってしまいました。
あなたはどうですか?
第三の殺人は御手洗のトラップなんて考えつきますか?
これはちょっとフェアじゃないなぁと思ってしまいました。
まぁ、それでも解けない僕が悪いんですけど、というか全ての密室が同じ方法で作られていると思い込んだ僕の負けなんですけど。
「斜め屋敷の犯罪」はちょっとアンフェアな気が「占星術殺人事件」よりしました。
まぁ僕の頭が悪いのが池なんですけど。
それでも納得いかない部分です。
御手洗が既に謎を解いているなんて思いもしなかったですから、彼が仕掛けたとは全く思いもよりませんでした。
火事の時点で怪しむべきだと今更ながら後悔しています。
御手洗の発言は冗談なのかマジなのか読めないんですよね。
文句も多いですが、なんだかんだ謎を解く鍵は散りばめられていたと思います。
今度こそ負けないぞ!今度は「異邦の騎士」でリベンジです。
まとめ
今回「斜め屋敷の犯罪」について「占星術殺人事件」よりイマイチという感想を書いてきましたが、これは好みの問題が大きいです。
ミステリーの中でも密室殺人が好きという方には「斜め屋敷の犯罪」がブッ刺さると思います。
僕のようなミステリーをふんわり楽しみたい方やトリックの中でも論理立てるものよりひらめきの方が好きな方は「占星術殺人事件」の方が楽しめると思います。
また、読みやすさでは圧倒的に「斜め屋敷の犯罪」の方が読みやすかったです。
なので最初に読むべきは「斜め屋敷の犯罪」かなと思います。
「占星術殺人事件」は前半部かなり苦労しながら読み進めましたので。
誰が死ぬのか、ドキドキ感を味わえるのも「斜め屋敷の犯罪」の魅力だと思います。
次々と死んでいく王道の探偵ストーリーに酔ってください。
タイトル通り斜めが謎を解く鍵の本書。
ぜひ、あなたの推理力で謎を名探偵より早く解いてみてください。
きっと無理でしょうが、もしかしたらあなたの推理力は名探偵を声た名探偵かもしれません。
作者に真っ向勝負を挑んでみてはいかがでしょうか?
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