5分でわかる秋吉理香子 小説「暗黒女子」書評&ネタバレ解説・結末は…

小説の書評

イヤミス小説は好きですか?

イヤミスとは、読み終わった後に、イヤな気持ちになるミステリーのことを言います。

今回紹介する秋吉理香子さんの「暗黒女子」はまさにそんな小説で、僕の好みど真ん中でした。

普通のハッピーエンドに飽きている読者にぴったりの作品で、最後のどんでん返しには震えました。

この記事では、「暗黒女子」の書評からネタバレありの要約・あらすじ、大どんでん返しからの書かれていない部分のオチについて考察します。

では、行ってみましょう!

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あらすじ

名門女子校の真っ暗な部屋で、澄川小百合が文学サークルの仲間たちに語りかける。

「今夜は嵐の中、お集まりいただいてありがとうございます。」

集められた文学サークルのメンバーは小百合を含め6人、集まった目的は文学サークルの年次恒例企画・闇鍋パーティー。

闇鍋パーティーではサークル会員が持ち寄った小説を朗読し合うというのも恒例だった。

今回の小説のテーマは「死んだ女子生徒・白石いつみ」

自殺か、他殺か、謎めいた彼女の死についてそれぞれの会員が小説と称して、事実と推理を証言していく。

果たしていつみの死の真相とは?

闇鍋に隠された本当の意味とは?

本書の概要

ページ数

文庫サイズで解説含めず285ページ、全294ページでした。

読むのにかかった時間

非常にテンポの良い作品で、だいたい3時間半ほどで読み切ることができました。

構成

それぞれのサークルのメンバーが書いた小説が5つの章に分かれた目次になっています。

5つの一人称で書かれた小説をまとめた最終章で結末がわかるという構成です。

基本、一人称で書かれた短編集に近い雰囲気で書かれています。

ただし、内容は一貫して「白石いつみ」について書かれており、長編に分類される小説です。

メンバーごとが書いているという設定なので、書き方はそれぞれで異なっているのも特徴になります。

書評(ネタバレなし)

こういうのが好きなんだよー!

僕は、イヤミスが好きなのかもしれません。

「暗黒女子」はまさにイヤミスと呼ばれる作品で、読み終わった後のやられた感、怖さ、後味の悪さが最高でした。

始まりからどことなく何かあるな、という雰囲気を出していたのですが、まさかこんな終わり方にするとは思いませんでした。

きれいな終わり方であるものの、決してハッピーエンドではない、読者の幸せなんて知ったこっちゃない終わり方が堪りません。

サークルメンバーの小説が始まっていくと、徐々に白石いつみのカリスマ性や人を惹きつける性格がわかりつつ、さらに読み進めると、小説同士に矛盾が生まれていく。

どれを信じればいいの?となったところに、とんでもない真実と展開。

圧巻です。

久々に震えました。こういうオチへの持っていき方、あえて書かないことで怖さを引き立てる旨さも感じました。

女子高生が登場人物という点も舞台設定として完璧でした。

みんながみんな自分を主人公に置き換えて、物事を考えて自分の好き勝手に解釈していく感じが秀逸に表現されていて、物語だけでなく細かい描写でどんどんのめり込んでいきました。

文体も非常に読みやすく、一気に読んでしまいました。

ラストが後味悪い形にはなっているので、人を選ぶ話ではありますが、僕は大好きです。

なんとなく「神様ゲーム」に似た雰囲気を感じますね。

あれもイヤミス系でした。

短めの話ですので、イヤミスを体験したい方にぜひおすすめしたいです。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからは、ネタバレを含みますのでネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約あらすじをしていきます。

5人の女子生徒たちの小説をまとめると下記のようになります。

二谷美礼:

白石いつみとは、2つ下の後輩の関係にあたり、いつみの弟の家庭教師のバイトを通して家族ぐるみで仲が良かった。

いつみはなんでも話してくれて、ある日、父親がサークルメンバーの古賀園子と関係を持っていることで悩んでいると相談を受けたとのこと。

関係解消のため古賀を呼び出し、逆上した古賀に殺されたのだと、二谷は小説内で語った。

小南あかね:

白石いつみとは、一個下の後輩にあたり、料亭の娘でお菓子作りが得意という腕を買われサークルメンバーとしてサークル部室でお菓子を振る舞っていた。

いつみとお菓子作りをしている時に、弟の家庭教師である二谷が家の物を盗んでいて困るとの話を聞く。

二谷は実家が決して裕福ではないため納得したあかねは、いつみを殺したのは盗みをし、指摘を受けたことで怒った二谷だと考えた。

ディアナ・デチェヴァ:

ブルガリアからの留学生の彼女、いつみがブルガリアへ短期留学した時に知り合いその後、いつみの計らいで日本へと留学してきた。

同じく短期留学で知り合った高岡志夜といつみが揉めている姿を目撃した。

揉めているときに「殺してやる!」という言葉を聞いたのと、短期留学の時から無愛想で印象の悪かった高岡が、いつみを殺したのだとディアナは主張した。

古賀園子:

いつみとは同学年で、医学部を目指し勉学に励む高校三年生。

ある日、ディアナが人形の胸にナイフを刺していかにも呪いをかけている姿を目撃する。

その後、いつみが実際に具合が悪くなっていき、最終的に十字架までも恐れるようになったことから、ディアナによる呪いで死んだと結論づけた。

高岡志夜:

ライトノベル作家として活躍している、いつみの一個下の後輩に当たる彼女。

いつみが具合が悪くなっているタイミングが、いつもサークルの活動でお菓子を食べた後だと気がついた彼女は、お菓子を作っている小南あかねが毒を持っていると考えた。

そして、あかねがいつみを突き落とすところを目撃したと主張した。

ここまでが5人のメンバーたちの小説の内容で、真実はいつみが残したもう一つの小説で明らかになった。

5人のメンバーはそれぞれに秘密を持っていて、その秘密を全て知っていたのがいつみだった。

秘密をネタに5人のメンバーを文学サークルに入れ、コマ使いとしていたのだ。

また、いつみはサークル担当の教師・北条と恋人関係にあった。

そして、ついに北条といつみの間には子供ができた。

いつみの父親は学校の理事を務め、病院なども経営する厳しい父親だったため、タイミングを見て北条との関係を明かし結婚をしようと考えていた。

しかし、父親は密告を受けいつみの妊娠を知る。結果的にいつみは子供を堕ろし、密告者であると考えられる5人のメンバーを恨む。

恨みを晴らすべく、自分が死んだふりをして5人を闇鍋パーティーに呼び出し、闇鍋の中に毒を混入させようと計画した。

そして、本日5人のメンバーは集まったのだ。

語り手である澄川小百合を除いた5人のメンバーは顔面蒼白する。

白石いつみは生きていた。死んだというのは真実ではなく、いつみはテラスから飛び降りたものの、生きて北条と駆け落ちをしていただけだった。

今日の集まりにもいつみは参加し、みんなの朗読する小説を聞いて笑おうと決めていたはずなのに、そこにいつみの姿はなかった。

そこで澄川小百合が語り始める。いつみを尊敬していた澄川小百合だったが、北条との駆け落ちによっていつみの美しさは消えたと。

そして魅力を失ったいつみに変わって、私が主人公になるのだと。

いつみの計画に反して、澄川小百合はいつみを逆に殺し、闇鍋の中身は毒薬は入れなかった。

だが、メンバーたちの顔はこわばったまま、蒼白としていた。

結末の考察と解説(ネタバレあり)

最後の結末を考察していきます。

澄川小百合は、闇鍋に毒薬である「すずらん」を入れませんでした。

文庫276、277ページ「わたしは確かに、このてですずらんを入れました。」とありますが、これは、この会合が始まる前にいつみに飲ませた紅茶に入れたという意味だったのです。

なので、まず闇鍋に毒薬である「すずらん」は入っていなかったということがわかります。

続いて、最後に澄川小百合が語った「ヴィーナスの腕」「新たな罪の証」「キリストは、聖体と聖血を弟子や信者に分け与えることによって永遠に生き続けた」という話から闇鍋の中身は「いつみ」ということがわかります。

いつみを殺した澄川小百合は、その体を刻み、闇鍋の中に入れサークルメンバーに食べさせていたのです。

人食をさせたことで、共犯にさせるというオチだったのでした。

ゾッとするオチです。

他にも腕時計が闇鍋から出てきた話も伏線になっていて、闇鍋の中から出てきたのが昔いつみが手にしていた時計というのも闇鍋の中身を暗示するものでした。

闇鍋の中身については原作では特に言及されるところはなかったですので、考察してみました。

他にも、いつみの告白の真実につながる部分はメンバーたちの小説で伏線が張り巡らされていたので、ぜひ色々探してみてください。

短期留学の話とか、鏡の話とか。妊娠と言われれば納得する話も多くありました。

まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。

イヤミスと呼ばれる作品ですが、伏線が見事にはまっているミステリー小説だと思いました。

一度読んでからもう一度読み返すと、言われてみれば最後のオチにつながっているわ…と再度震えること間違いなしの内容です。

後味は確かに悪いですが、この味がクセになっちゃうんですよね…笑

普通のハッピーエンドの小説に飽きてきた方に特におすすめしたい小説です。

ミステリーとして非常にレベルが高いので、ぜひ読んでみてください。

では、皆さんの後味が悪くなることを祈っています。

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