5分でわかる東川篤哉「君に読ませたいミステリがあるんだ」書評&ネタバレ要約・解説

小説の書評

推理もので重要な要素の一つが、フェアであることです。

作家が提示する小説の内容から推理ができることが、一種の暗黙の了解になっています。

今回紹介する東川篤哉さんの「君に読ませたいミステリがあるんだ」では、ツッコミどころの多い推理ものではあるものの、実は大きな伏線が隠れているというミステリーでした。

若干大袈裟すぎる言い回しが帯にはありましたが、楽しんで読むことができました。

この記事では、あらすじから、書評、おすすめ度、一部ネタバレありの内容要約、解説を行っていきます。

では、いってみましょう!

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あらすじ

4月、主人公・僕は鯉ヶ窪学園に入学した。

僕は「第二文芸部」の部室に迷い込んでしまう。

そこにいたのは部長で学園一の美少女(自称)の水崎アンナで、彼女は自作のミステリを強引に僕に読ませる。

ただのユーモア溢れる短編集かと思いきや、まさかのトリックが待っている。

推理を愛する人にこそ読んでほしい、アンフェアなところに潜むまさかのフェアなトリックをぜひとも読んで欲しい。

本書の概要

ページ数

解説含めず358ページ、全367ページでした。

読むのにかかった時間

だいたい4時間ほどで読み切ることができました。

構成

僕の一人称が主軸で、その中で水崎アンナに読まされる小説が短編で進んでいくという構成です。

短編小説が5つ含まれていて、短編小説内は水咲アンナという主人公が探偵役になって、高校の周りで起こる事件を解決していくという構成になっていました。

書評(ネタバレなし)

ズバリ、期待はずれだったー!というのが正直な感想です。

帯でこの大仕掛け見破れますか?とか。

騙されました…とか。

書いてあって、相当すごいどんでん返しと伏線回収があるんだろうと期待していたのですが、読み終わってみると、あれこれだけ…?

と思ってしまったのです。

なので、まずこれから読む方は期待しすぎちゃいけません。

僕みたいに期待しすぎると、想像の下を言ってイマイチと感じてしまう可能性が高いです。

ただ、期待せずに読むときっと驚けて良い仕掛けだな。と思えるはず。

実際、期待という値を抜きにすればしっかりとした伏線とそれまでのミスリードがうまかった作品でした。

ユーモア溢れるミステリーでもあり、キャラも良いので読みやすいのもGoodポイントです。

伏線も短編集なのにも関わらずしっかりと、あってわかりやすい。ツッコミどころのない綺麗な仕掛けだと思います。

ただ、期待しすぎると痛い目を見るのです。

期待しすぎるとガッカリしてしまいますが、そこそこの期待くらいで読むとちょうどいいくらいの絶妙な伏線回収だと思います。

もちろん伏線回収で鳥肌が立つとか、空いた口が塞がらなくなるほどの大ドンデン返しはありません。

期待そこそこに読むとちょうどよく驚けて、ストーリーも非常に読みやすくて良い作品だと思います。

おすすめ度

おすすめ度は、5点満点中2点です。

ごめんなさい。あんまりおすすめはできません。

一番は期待はずれの伏線回収である点です。

僕が完全に期待しすぎたというのが悪いのですが、伏線回収の驚き具合としては微妙なところ。

さらにユーモア溢れて面白く読みやすくはあるんですが、ミステリーのクオリティとして手放しでおすすめできる作品ではないと感じました。

僕としては、ユーモア系よりも緻密でちょっと怖いくらいの雰囲気からの大どんでん返し系が好きなので、この辺は好みの問題だと思います。

伏線好きには特におすすめできないですね。

伏線好きの方はこれまでたくさんの驚きを味わってきたことでしょうから、今回の驚きだと拍子抜けすぎて腰が抜けてしまうかもしれません。

ただ、全体を通して読みやすくはあるので、ミステリーの雰囲気が苦手という方にはぴったりだと思います。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約を行っていきます。

全5章に分かれた物語のネタバレあらすじがこちらです。

音楽室の殺人

水咲アンナは放課後遅くなって部活が終わり、借りていた本を国語教師に返そうとしていました。

すると国語教師はその本は音楽教師である浦本のものであるから、まだ音楽室にいる彼女に直接返してほしいと言われます。

アンナは言う通りに音楽室に行く途中に、怪しげな人影にぶつかりながらも音楽室にたどり着くと浦本は死んでいました。

警察が到着する中、怪しいのは三人、たまたま学校に残っていた学生二人と盗撮目的で侵入していた男。

アンナは窓枠に残った桜の花びらから推理をめぐらし、ついには国語教師こそが真犯人だと突き止めるのです。

狙われた送球部員

送球部(ハンドボール部)の部長は部室で雨宿りしているとついついうたた寝してしまった。

部室のプレハブ屋根に当たる雨の音を聞いているうちに眠ってしまったのだった。

そんな中目覚めると屋根を打つ雨の音が消えていた。さて帰るかと、門に向かっている途中で何者かによって頭を殴られて気絶してしまう。

その現場に現れたのは水咲アンナ。

彼女は送球部の部長を見つけ、先生を呼んだ。

犯人がわからず、その日はそれで解散となったが、明日どうしても誰がやったのか気になったアンナは調査を進める。

すると、送球部の部長の話を聞き、雨が止んだタイミングこそ犯行時刻付近かと思われたが実は違かった。

部室の屋根を打つ音は雨ではなく、犯人が水を撒いていた音だったのだと推理したアンナは送球部の部室の空き部屋に死体を見つけ事件の真相に辿り着くのだった。

消えた制服女子の謎

夏のある日、水咲アンナは文芸部部長とたわいもない会話をしていると、演劇部の部長も参加してきた。

そんな中ふとプールの更衣室をみると、一人の女子高生が更衣室に入ったと思ったら悲鳴をあげた。

急いで更衣室に向かう三人は、更衣室から飛び出してきた自分たちとは異なる制服の姿の人物とすれ違う。

更衣室には遺体があり、今出て行った制服の人物こそが犯人だと即座に判断して追いかける。

しかし、犯人は部室棟に消え、居場所がわからなくなってしまう。

手がかりは自分たちとは異なる制服ということ。

そこから、アンナは推理を巡らし、制服は演劇部の持ち物であること実は更衣室に入った人物こそ速着替えをして更衣室から飛び出してきたのだと言い当てる。

そして、三人の共犯によって作り出された事件だということを看破するのだった。

砲丸投げの恐怖

別の高校に遊びにきていた水咲アンナは、外を歩く人物に注目していた。

特に意味もなく見ていただけだったのだが、その人物に黒い物体がぶつかるのを目撃する。

変な倒れ方をしたその人。

頭を強く打ち保健室へと運ばれた。彼は市川。

倒れた現場には砲丸投げようの球が落ちていて、それがぶつかったことによって市川が頭を打ったのだと考えられた。

しかし、アンナは現場を観察する中で別の推理をする。

砲丸投げの球はフェイク。実は市川にぶつかった球は泥団子だったのだと言う。

まさかと思えるトリックだが証拠を集めにきた真犯人によって真相が明らかになり、またまたアンナは謎を解き明かすのだ。

エックス山のアリバイ

恋ヶ窪にあるちょっとした林をエックス山と呼ぶ。

アンナはそんな中を歩いていると、一人の女性が倒れていることを見つける。

彼女は刺されていて最後の力を振り絞って犯人らしき「オギワラ・ユウジ」と人物名を話して倒れる。

アンナは警察と救急車を呼びその場は治った。

アンナは事件がなかなか解決しないことを知り、自分も調査を進めることにする荻原がやる店にも潜入し情報を集めようとするも荻原にはアリバイがあることがわかる。

被害者女性は、男と19時に分かれ、その後19時20分にアンナによって発見されている。

その間荻原にはアリバイがあったのだ。

荻原が双子で一方がアリバイを作ったのかと疑うが違う。

真実は被害者の方こそが双子だったのだ。

被害者は荻原と一緒にいて、19時より前に刺され、19時20分にアンナに発見された。

男と19時に分かれたという方は双子の姉だったのだ。

真実がわかり、犯人はやはり荻原であることが判明し事件は幕をとじる。

砲丸投げの恐怖の補足

砲丸投げの恐怖の終わりにリレーのアンカーの少年が組体操後に怪我をした場面が出る。

その際アンナは「うーん、まさに完全犯罪だな」と言いました。

この意味分かりましたか?

これはアンカーの少年はクラスの人たちの怒りを買い、わざと組体操から退場する時に足を引っ掛けられてみんなに踏まれて怪我をさせられたのです。

リレーという体育祭の花形でミスをしたリレーのアンカーの少年をみんなで、ぶっ潰す小さな犯罪の話が書かれていました。

トリックの解説(ネタバレあり)

「君に読ませたいミステリがあるんだ」のトリックの話をしましょう。

ズバリ、「君に読ませたいミステリがあるんだ」のトリックは順番入れ替えものでした。

「エックスの山のアリバイ」がスタートの物語で、「君に読ませたいミステリがあるんだ」で紹介された順番が全く逆だったのです。

一見、「君に読ませたいミステリがあるんだ」で紹介された順番に1年間がすぎたように思わせといて実は「エックスの山のアリバイ」がスタートで逆順こそが正確な順番。

だからどうしたのか?という話だと思いますが、これによって一話目(音楽室の殺人)で死んだと思われた音楽教師・浦本が生きているという驚きを見せてくれたのです。

この浦本が実は生きているというトリック(順番が異なるので生きているのは当たり前)というのをやりたいがためのストーリーの順番だったというわけ。

実は細かい描写で順番が異なるだろうというのも描かれていて、引き出しに原稿を入れる場面とか。ヒントがありながらも最後まで順番にトリックがあるということを隠しているという内容でした。

浦本が生きていてびっくり!というトリックだけにしては大掛かりすぎると思う内容です。

まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。

今回は、東川篤哉さんの「君に読ませたいミステリがあるんだ」を紹介してきました。

期待しすぎると、悲しい感じになっちゃいますが、ユーモアあるミステリーとしては読みやすかったです。

最後の方はどう逆転するのかとワクワクして、一気読みしちゃいました(最終的にはちょっとがっかりするんですが笑)

たまにはこういったミステリーも良いですね。

では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

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