借金の末路が悲惨すぎる…
首が回らなくなる借金は絶対にやめといた方がいいというのがよくわかるミステリー小説が、宮部みゆきさんの「火車」です。
婚約者のただの失踪かと思いきや、そこからどんどん闇が広がっていく内容にどんどん引き込まれました。
悲しい過去と借金と逃走。
見えない犯人に迫っていく姿は見事過ぎました。
この記事では、そんな「火車」について書評から、一部ネタバレを含んだあらすじ紹介、最終的にどうなったかを自分なりに考察していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
休職中の刑事・本間は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子を探すことになった。
自らの意思で失踪し、しかも徹底的に足取りを消していた彰子。
なぜそこまでして彰子は自分の存在を消さねばならなかったのか。
残っていた手がかりは彰子が以前にクレジットカードによって借金をし、自己破産していたことだけ。
果たしてたったこれだけの手がかりで彼女の居場所を突き止めることができるのか。
彰子の過去に何があったのか。彰子の正体とは?
真相を知ってあなたは誰を責めますか?
本書の概要
ページ数
あとがき、解説含めず686ページ、全696ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい8時間ほどで読み切ることができました。
構成
刑事の本間を主人公にし本間視点のみで描かれる三人称の構成になっています。
関根彰子の失踪から見事にオチまで持ってくる構成は見事で、全ての調査が自然で意味のある内容になっていました。
書評(ネタバレなし)
長かったけど面白かったー!というのが僕の感想です。
とんでもないオチがあるわけでも、大どんでん返しがあるわけでもないのに、おもしろかった!と手放しで言えるくらい面白いと思いました。
とにかくストーリーの組み立てが良かった。一人の女性の失踪がまさかこう展開していくのか…となりますし、その手がかりでよく真相に辿り着くことができたなぁと感心してしまいます。
多少無理やりな調査方法だったりしてもいいものを、完璧に誰でもできる方法で地道に調査していく姿も見事でした。
ちょっとずつ、自分が調査員になったつもりで謎が解けていくのはワクワク感を引き立てられましたね。
また社会問題にもなるクレジットカードや借金というテーマをうまく絡めているのも良かった。
これ一冊読むだけで、借金の恐ろしい面が如実にわかる気がしました。
借金が全て悪いわけではないものの、よくないお金の使い方やどうしてよくないお金の使い方をしてしまうのかがわかる内容でもありました。
人間の弱い部分がよくわかる内容で、犯人にも同情してしまう内容になっていたのも良かった点です。
あえてマイナスポイントを上げるとしたら、長すぎるってところと大どんでん返しがないところですかね。
長すぎるので初心者にはおすすめできませんが、じっくり本を読める人にはお勧めできます。
大どんでん返しがないのは残念ではありますが、伏線として序盤に出てきた謎が見事に最終的に繋がってくるのはよかったです。
おすすめ度
宮部みゆきさんの「火車」のおすすめ度は5点満点中3点です。
こんだけ絶賛しているのに、おすすめ度低いな?という印象を受けるかもしれません。
面白い!だけどどうしても長編でページ数が700ページ近いというのがおすすめできるかという点で、悩みます。
長くても読める粘り強く真相を追いかけることができるという方には手放しでおすすめできますが、ミステリーや読書をあんまりしてきていない方には決しておすすめはしないですね。
途中で飽きてしまう可能性が高そうです。
もちろん、過程も非常に読みやすく徐々に真実が明らかになっていくのは見事なのですが、どうしても長過ぎて読むのをやめてしまうという方が現れそうだと思いました。
そういった意味で、内容は非常によくておすすめしたいけど、長すぎるから相手を選ぶという評価で3点とさせていただきました。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじを行っていきます。
休職中の主人公で、刑事の本間は、ある日遠縁である和也から婚約者を探してほしいとの依頼を受けます。
婚約者である関根彰子は自己破産をしていた過去があり、それが和也にバレ、いなくなったとのこと。
実際に彰子が住んでいたマンションなどに行ってみますが、手がかりは写真が数枚しかありません。
自己破産をしているという情報から、自己破産をした際にお世話になった弁護士事務所に行くと、とんでもない事実が判明します。
なんと、和也の婚約者である彰子と自己破産した彰子は別人でした。
彰子は自己破産後、人が入れ替わっていたのです。
偽彰子と彰子の二人がいることを知った本間は、本物の彰子の過去から偽彰子との繋がりを調べていくことにしました。
その中で彰子がクレジットカードの誘惑に負けて借金を背負ってしまったこと、幸せになろうと努力してきたことを知り、さらに母親が事故死していることも調べ上げます。
もしかしたら偽彰子は過去を彰子身の回りを調べ、母親を事故死に見せかけて殺したのではないかという推理にまで辿り着きます。
すると、偽彰子の調査でも進展が起こります。
残っていた写真から、偽彰子が勤めていた会社が判明したのです。
偽彰子になる前の会社で本名が「新城喬子」ということがわかります。
新城喬子が勤めていた会社は女性の下着メーカーで、新城喬子はコールスタッフをしていました。
顧客であった彰子の個人情報をその会社で盗んだと推理する本間は、さらに新城喬子を調べることで彼女と肉体関係にあった上司を見つけ出します。
上司からの情報で、新城喬子もまた借金で苦しんでいた事実を教えられます。
新城喬子の元夫にも会い、新城喬子の両親が借金を作り、そのせいで彼女まで借金取りに追われ苦しんでいたことを知ります。
借金取りから逃げ切るために、彰子の名前と身分を盗んだんだという真相に辿り着くのです。
そして、和也に正体がバレそうになって逃げたこともあり、また誰かの名前と身分を乗っ取る気だと本間は推理します。
そして、その推理は当たり、ついに新城喬子に会うところまでやってきました。
さぁあとは彼女に真相を聞くだけ、身分を乗っ取る際に彰子は殺したのか、どこに埋めたのか。
新城喬子は真相を語ってくれるのか。
という場面で、物語は幕を閉じました。
オチの先の考察(ネタバレあり)
最終的に新城喬子に事情を聞くことなく終わった物語。
僕はあえてここで終わらせて正解だったと思います。
読者にあとは想像させる。というのが見事な手法だと感じたのです。
というわけで、僕も勝手にこの先のオチについて推理、考察したいと思います。
僕はズバリ、新城喬子は彰子を殺していないというオチだと思うのです。
若干の願望ではあるものの、根拠もあります。新城喬子は人を殺せるほど人間の心を失っているように見えないからです。
また、なんとなく表現が殺しているというよりかは、彰子は自殺していたという方がしっくりくると思いました。
あるとしたら彰子は家で首を吊っていて、たまたま出会した新城喬子が利用して死体の処理だけして身分を乗っ取ったという感じでしょうか。
最終的に彰子の他に身分の乗っ取りを考えているわけなので、そいつも殺そうとしたのでは?という話にはなってきそうですが、どうしても単純に殺した。という話になって欲しくないんですよね。
全てが本間の推理通りで、シンプルに新城喬子は彰子を殺し、死体をバラバラにして身分を乗っ取ったと皆さんは思いますか?
僕は新城喬子は殺しはしておらず、身分を乗っ取っただけ。最後の場面も決して殺して身分を奪おうとしていたわけではないと思いたいです。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、宮部みゆきさんの「火車」を紹介してきました。
長編で長かったですが、読んで良かった作品でした。
失踪からこういった展開になっていくのか。と驚かされました。
最終的に見事にオチまで繋げていく構成力は見事で、不自然さがない美しすぎるミステリーだと感じました。
最後は若干の不満を持つ人もいそうなラストでしたが、僕は好きでした。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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