最後の最後にどんでん返しの連続がある小説はお好きですか?
今回紹介する「くわがきゆみ」さんの「レモンと殺人鬼」では最後にどんでん返しがいくつも仕掛けられた小説でした。
ただのミステリーかと思いきや最初の事件があっさり解けると、そこから一気に引き込まれていく。
なんとも不思議で、クセになる一冊でした。
この記事では、そんな「レモンと殺人鬼」のあらすじから、書評、一部ネタバレを含むあらすじ要約、解説を行っていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺された。
母親はそれを気に、失踪してしまう。
それぞれ別の親戚に引き取られ不遇の日々を送っていた小林姉妹。
そんなある日、姉である小林美桜に連絡が入る。
妹の小林妃奈が殺されたとのこと。
そこから、美桜の運命が狂い始める。
被害者であるはずの妃奈に、生命保険金殺人という疑いをかけられ世間からバッシングを受ける美桜。
絶対に妹がそんなことをするわけがない。と思う美桜は、事件の真相を追い始める。
果たして、妃奈の潔白を証明することができるのか。
果たして、妃奈を殺した犯人は誰だったのか。
本書の概要
ページ数
解説含めず、302ページ、全312ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
私という一人称で描かれる構成になっていました。
美桜の現在と、過去をうまく組み合わせた構成で、父親を殺した殺人鬼の視点も見事に絡めながら大きく前半と後半に分かれていました。
前半では妃奈の潔白を証明する構図、後半は妃奈の殺された原因が明らかになる構図になっていました。
おすすめ度
「レモンと殺人鬼」のおすすめ度は、5点満点中4です。
誰にでもおすすめできて、超楽しめる内容でした。
伏線がしっかりしていますし、何より事件の流れが見事で最後に驚きという仕掛けまでしているのが良かったです。
グロテスクなシーンがないのにここまでハラハラドキドキさせられるのは、そうありません。
万人におすすめでき、伏線好きの僕を満足させてくれたという評価で、4.5という高評価をつけました。
書評(ネタバレなし)
シンプルなストーリーかと思いきや最後の最後に驚きを与えてくれる作品。というのが僕の感想です。
妃奈という妹の潔白を証明するというストーリーから始まり、最後には全く別の角度で完結する流れが特に良かったと思います。
伏線回収という点も、鳥肌レベルではなかったもののしっかりと組み立てられていて、納得でした。
矛盾点がほぼない見事な一冊に仕上がっていて、完成度が高いミステリーだと思います。
2023年のこのミステリーがすごい対象をとっているだけある作品です。
とにかく読みやすいというのもよかった。
私という一人称で基本的に書かれていき、状況説明やら場面説明、人物説明が明瞭なのに簡潔にまとめられているのです。
この文体は非常に読みやすい。スラスラとストレスなく先に進むことができ、最後のとんでもないオチに行くことができます。
タイトルにもちょっとした伏線もあり、是非ともこの伏線だらけ、どんでん返しだらけの一冊を読んでみてほしいです。
どんでん返し部分が多少、無理やり感があるのは「レモンと殺人鬼」のマイナスポイントかなと思います。
ありえないだろ。とツッコミを入れたくなるものの、フィクションだからと納得すれば最高に楽しめます。
ぜひとも読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじを書いていきます。
美桜は大学の事務員として働いていました。
事務員といっても派遣社員で、残業代は払われない契約で金銭的に苦しい日々を送っていました。
そんな中、妹である小林妃奈が殺されたとの連絡を受け、遺品の整理をします。
妃奈は殺される前に彼氏の事故死によって多額の保険金を受け取っていたという情報がリークされ、世間は被害者であるはずの妃奈を批判し始めるのです。
姉である美桜の元にも記者が来て、取材をしようとします。
美桜は妃奈の恋愛事情など全く知らず、唯一妃奈がそんなことをしない人というのだけ確信を持っていました。
誰も妃奈を守ってくれないなら自分で妃奈の身の潔白を証明しようとします。
妃奈の元彼に話を聞こうとするも追い返されてしまいます。
そこに、美桜が働く大学の学生・渚が現れるのです。
渚はジャーナリストを目指していて、今回の妃奈の保険金殺人は真実ではないと思うから調査を手伝いたいと言い出します。
ちょうど一人では調査の限界だと感じていた美桜は渚に協力を仰ぎます。
時を同じくして、美桜は事務員とは別の副業をするようになりました。
児童館が終わる時間から夜の9時まで子供の面倒を見るボランティアへの参加です。
時給に惹かれ、大学生・桐谷に誘われる形で入りました。
ただ、そこには同じ中学校だった時の天敵・真凛がいました。
真凛は美桜のコンプレックスである歯並びを中学生時代、正面から笑いトラウマを植え付けていたのです。
そんな真凛と同じボランティアの現場で働くのは嫌でしたが、時給もあるのでなんとか我慢していました。
真凛はさらに渚と付き合っているということもわかり、ますます気まずい感じが漂います。
すると保険金殺人の疑惑が一気に晴れます。
妃奈は受け取った保険金を全額寄付していたのです。
寄付した団体から連絡を受け、美桜は妃奈の潔白を証明することができ、さらに世間にもその情報は流れ、全てが丸く収まったと思いました。
しかし、そうなると妃奈はどうして殺されたのだ?という疑問が浮かびます。
美桜には一人だけ心当たりがありました。
父を殺した当時14歳だった佐神という人物です。
佐神は捕まったものの10年という時間で出所していました。
美桜は佐神が名前を変えて、美桜自身を狙っていると考え警戒します。
そんな中、渚が名前を偽っているということを知り、渚=佐神と考えます。
しかし、それは間違っていて渚はただのDV男だったのです。
渚は逆上し美桜にナイフを突き出しますが、そこに桐谷が現れます。
彼は渚から美桜を守りました。
そして「君を昔から知っていた」と言い出すのです。
それを聞いた美桜は今度こそ桐谷=佐神だと確信します。
桐谷に殺されると悟った美桜は逃げます。なんとか守衛室に入り一難去ったと思いきや。
守衛が日本刀を持って美桜を追いかけてきたのです。
守衛こそが佐神でした!
正確には佐神の父親が守衛だったのです。
守衛である佐神の父は、人を殺したい衝動を常に持っていましたが、愛する妻によって衝動は抑えられ、息子を守るという意思で人を殺さずにいました。
しかし、妻は事故死、出所したタイミングで妃奈によって息子も殺されてしまっていたのです。
それを知った佐神(父)は衝動を抑えなくて済むと喜びに打ちひしがれ、妃奈を殺し、美桜と妃奈の母親までも殺しました。
そして残った美桜も殺そうというのです。
美桜は自分の人生を呪うとともに、怒りで佐神を返り討ちに。
返り血を浴びながら美桜は笑いました。歯並びが悪い歯を露わにして。
おかしい奴らの解説(ネタバレあり)
ここではおかしな変な奴らについて、もう少し詳しく解説できればと思います。
まず一番最初に明らかになった渚です。
渚はそもそも大学の学生になりすましていた人物でした。
大学生になりすましていた理由はわかりませんが、真凛の彼氏というポジションに落ち着きながら真凛の支配したいと考えていました。
支配=恐怖される存在という考えを持つ彼は、保険金殺人を行ったとされる妃奈の姉・美桜に恐怖を持っていた真凛のことを知り、美桜よりも自分の方が怖い存在だと思わせたかったのです。
そのために、美桜は怖い存在じゃない証明として、妃奈の身の潔白を証明したり、美桜を殺そうとしたりしたのでした。
最後には彼女である真凛に暴力という形で恐怖を植え付けようとしていた、DV男というおかしい人物でした。
続いて桐谷、彼は大学生でありながら元々は美桜と幼い頃出会っていました。
正直それだけで、決して悪い人物ではありませんでした。
唯一、後述します美桜の異常性を知りながら、そこに惚れるという変な性癖を持っていただけです。
肝心の主人公・美桜です。
彼女は子供の頃、父親の手伝いで鶏を解体していました。
いやいやと言いながらも、鶏の解体を行いすっかりと慣れきってしまったのです。
そんな彼女は常に自分は不幸であり、妹や母、父が幸せそうで気に食いませんでした。
父親が殺され、鶏の解体をしなくて済んだ、妹、母も自分と同じ不幸を味わっている事実に喜びを感じました。
そして、不幸を嬉々とする人物へとなったのです。
妹が保険金を寄付していることを知り、彼女は幸せになっていなかったんだと安堵するほどで、家族が幸せになり自分だけが不幸であり続けることが許せない異常性を持っていました。
以上3人の異常性をここでは紹介しました。
他にも、妹・妃奈の異常性、殺人鬼・佐神の異常性もこの物語を引き立てる内容でした。
そちらについてはぜひ本編「レモンと殺人鬼」を読んで確認してみてください。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は「くわがきゆみ」さんの「レモンと殺人鬼」を紹介してきました。
伏線たっぷりで、逆転に次ぐ逆転というどんでん返しな展開が面白い一冊でした。
読みやすく万人におすすめできる点も評価が高いです。
本当に読みやすく、わかりやすく驚ける内容になっていますので、ぜひ読んでみてください。
では、皆さんがどんでん返しに酔いしれることを祈っています。
コメント
誤字が酷く、ネタバレ項目については内容が間違っている。
ご指摘ありがとうございます。
ネタバレ項目については、あらすじかつ要約であり多少省略している部分があるため内容齟齬が生まれる可能性もあります。ご了承いただけますと幸いです。