「泣きそうな顔されるよりも、喜ばせたい」
誰でも思うようなことでも、悪党にとっては違うはずでした。
今回紹介するのは僕の大好き、伊坂幸太郎さんの作品「残り全部バケーション」です。
短編のような造りでありながらも、しっかりと全てがつながっている一冊。
この記事では、そんな「残り全部バケーション」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

当たり屋、強請りはお手のもの。
あくどい仕事で生計を立てる溝口と岡田。
ある日、「泣きそうな顔よりも、人を喜ばせたい」という理由で岡田が足を洗いたいと溝口に打ち明ける。
溝口が出した条件は「適当な携帯番号の相手と友達になること」
果たして、この条件がどう彼らの生活を変えてしまうことになるのか。
本の概要

ページ数
解説含めず294ページ、全302ページです。
読むのにかかった時間
だいたい3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
全5章で構成され、1章ごとに一つの区切りがあり、登場人物の過去や現代となっています。
ドラマやアニメといった形で一話完結しながらも、全て同じ登場人物かつ繋がっているという構成です。
おすすめ度

伊坂幸太郎さんの「残り全部バケーション」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
割とおすすめだけど、僕としてはもっとすごいのが良かった~という評価。
物語の一つ一つはとにかく面白い。引き込まれます。
一章を読んで時計を見ると、いつの間にかこんなに読んでいたのかとなるくらい、引き込まれるキャラ、テンポの良い会話。
実に伊坂幸太郎さんらしい一冊だと思いました。
もちろん、最後には伏線を回収する場面もあり、鳥肌までは行かないまでもちゃんと全てがつながっていて、意味のないものなんてない。と教えてくれます。
ただ、僕としては鳥肌レベルの伏線回収を求めているのです。なのでどうしても物足りなさを感じてしまう。
伏線回収しつつの大どんでん返し、超スッキリの物語になってしまう。というのが好み。
なので、どうしてもおすすめ度を下げてしまいました。
物語は面白い、読みやすさもピカイチ。短編のように章ごとに物語が分かれているので社会人でも読みやすい。という点からおすすめです。
ただ、伏線がすごい。とにかく小説の魅力が全部詰まったものを求めると、物足りなさを感じてしまうかもしれないので注意だと思いました。
気になる方は、ぜひお手に取ってみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。

では、ネタバレありの内容要約、あらすじからやっていきます。
全5章について、それぞれ簡単にあらすじをまとめていき、最終章だけ少しだけ詳しく紹介します。
第一章:残り全部バケーション
父親の不倫によって、離婚、解散を明日に控えた家族。
そこに突然メールが入る「友達になりませんか?一緒にドライブでもしましょう」送り主もわからぬそのメールに父親は返事をするどうせ明日解散する家族だ。やってみようと。
送り主は岡田。岡田もまた長年やってきた裏稼業から足を洗おうとしていた。相棒の溝口から出された条件「適当な携帯番号の相手と友達になること」のためにメールをしたのだった。
家族と岡田は仲良く食事を楽しみ、最後は岡田だけガラの悪い連中に連れてかれる。
不正利用しているクレジットカードがバレたのか?
第二章:タキオン作戦
溝口と別れる前の岡田は、信号待ちしている小学生が気になった。背中を気にしている少年。
その少年は父親に虐待されていることがわかる。
助けたいと思うが、溝口にはやめておけと言われる。どうせ変わらんと。
それでもほっとけない岡田は一つの作戦を思いつく。
誰に言われても変わらない頑固な父親を変える方法、自分の考えだけが正しいと思っている父親を変える方法。
それは、未来から来た自分からのアドバイスという方法だった。
ぶっ飛んだ設定。果たして父親は信じるのか?虐待は無くなるのか?
第三章:検問
岡田と別れた溝口は新しい太田という相棒と仕事をしていた、ある女性を拉致した二人。首尾よく仕事が終わるかと思われた。
しかし、検問に捕まってしまう。
溝口の機転により、検問は通過するものの盗んだ車のトランクには大量の金が積まれていた。
警察官はトランクも見たはずなのに、どうして見逃したのか疑問に思う一向。
きっと検問した警官こそがこの車の持ち主で、この金はきっと悪いことをして手に入れた金のはずだ。
じゃあ、もらっていって良いだろう。と溝口と太田、そして拉致した女性にもお金を渡し解散したのだった。
第四章:小さな兵隊
物語は一気に過去に戻る。岡田が小学生だった時代。
岡田は変人に思われていた。
けれど、その行動は全て弓子先生にストーキングをしている人物のせいだった。
校門に書かれた悪口を消すために、ペンキで塗りつぶしたり。
ついにはストーカーが弓子先生の前に現れる。岡田は立ち向かい。
それを見ていた僕たちを助けてくれたのは、スパイと嘘をついた父親だった。
僕の父親は、浮気が原因で離婚していた。僕には離婚のことは言わずにスパイの仕事で海外にいると言っていたのだ。
ストーカーは捕まり、いつも僕を見てくれている父親に敬礼をした。
第五章:飛べても8分
溝口は相変わらず、悪どい仕事をしていた。
そんなある日、いつものように当たり屋をやっていたところ、運転手が銃を持っていた。
驚きながらも、逃げられてしまう。さらには溝口自身も対向車に轢かれ、怪我を負ってしまう。
入院する溝口。新しい相棒の高田は、そんな溝口のお見舞いに毎日のように行っていた。
その病院には実はもう一人重要人物が入院していた、毒島である。毒島は溝口らの悪どい商売を仕切っているリーダー。
岡田が足を洗いたいと言ってきた時に、襲わせた張本人である。
そんな毒島は命を狙われているらしかった。高田もいつでも毒島を守れるよう手がかりがないかを探っていると、なんと溝口の隣の患者こそ命を狙っている犯人だと推理する。
急いで毒島にそのことを知らせ、警備の連中もその犯人を追う。
しかし、これは全て溝口の策略だった。毒島を一人にさせるための作戦。高田はまんまと推理を誘導されていたのだ。
毒島に銃を突きつける溝口。動機は岡田の復讐。実は小学生時代の頃から岡田を知っていた溝口は岡田を殺した毒島を許せなかったのだ。
そして復讐を誓い今日に至った。
毒島はそんな中言った。「岡田は生きている。お前も見ている食べ歩きブロガーこそ岡田だ」と。
命乞いの言葉だと思うが、否定もできない。溝口と岡田だけが知っている事柄でそのブロガーにメールを送る。
果たして、その結果は?というところで物語は幕を閉じた。
真相の解説・考察(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは最後の最後、岡田は生きていたのか。否かを考察します。
ズバリ、生きていると思います。
スイーツ系ブロガーの「サキ」の正体が岡田だと、毒島は言いました。
まさに最初の章、家族の話に出てくる娘が「沙希(さき)」
そこから取った名前だと推測されます。さらに岡田は家族と一緒に食べたご飯のデザートに感動する場面も数行ではあるものの表現されています。
家族との出会いによって、新たな友達ができて、ご飯という感動対象に出会えた。
そんな岡田がブログをやっているのは実にしっくりきます。
さらに、いろいろ食べ歩くためのお金も、他人のクレジットカードを持っていることを考えると理解できるのです。
毒島から逃げ切れたのには少し、怪しいところもあるもののブロガー「サキ」=岡田には納得できるところばかり。
真実を書かない終わり方ではあるものの、これは伊坂幸太郎さんのやり口。
岡田は生きていると僕は思います。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は伊坂幸太郎さんの「残り全部バケーション」を紹介してきました。
一つ一つの話がつながっていく、気持ちのいい物語。
悪どいことをやってきたのに、いつの間にかキャラに惚れてしまう。
伊坂幸太郎さんの真骨頂ですね。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


