5分でわかる 烏丸尚奇「呪いと殺しは飯のタネ」書評&ネタバレ要約

小説の書評

事実は小説よりも奇なり。

まさにこの言葉にふさわしい一冊が今回紹介する烏丸尚奇さんの「呪いと殺しは飯のタネ」です。

新しいアイデアが出ない伝記作家である主人公 烏丸尚奇が巻き込まれる事件がテーマとなったミステリーで、あれよあれよと謎が深まり、引き込まれていく作品になっています。

この記事では、読んだら止まらなくなる「呪いと殺しは飯のタネ」の概要からあらすじ、書評、一部ネタバレありの解説を行なっていきます。

では、行ってみましょう!

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あらすじ

アイデア欠乏症で、フィクション作品が書けない伝記作家 烏丸尚奇。

ある日、彼の元に自伝を書いてほしいという依頼がやってきた。

深山波平という東大で、会社経営をしていた人物で、地元では寄付で町おこしに貢献したりと一見素晴らしい経歴を持つ人物だった。

伝記はやめて、新しいフィクション作品を今度こそ書くぞと決意していた烏丸は一度はその依頼を断ろうとするが、依頼の最後に書かれた「人生を変える刺激を約束する」という文に惹かれる。

波平の自伝を書くべく彼が生まれ育った街へと足を運ぶ烏丸は、波平の家族たちに起こった呪いともいえる数々の不幸を知ることになる。

呪いの影に隠れた正体はなんなのか、烏丸が体験する人生を変える刺激とは果たしてなんなのか。

小説家として再起を図ることができるのか、ぜひその目で確かめてほしい。

本書の概要

ページ数

文庫サイズで、解説含めず282ページ、全287ページです。

読むのにかかった時間

セリフが多めで、テンポ良く読むことができ、だいたい3時間ほどで読み切ることができました。

構成

作者である烏丸尚奇が主人公の作品で、烏丸の一人称で書かれた構成になっています。

登場人物は主要なところが6人と少なめで、名前がごっちゃになる可能性も低いと思います。

とにかくテンポが読みやすい作品で、休みの日に一気に読めちゃう一冊になっています。

セリフのやりとりや、烏丸自身の心の声も現代っぽいので読みやすさが抜群の一冊です。

書評(ネタバレなし)

面白いけど、他作品と比べちゃうと…というのが正直な感想です。

詳しく書いてしまうとネタバレになってしまいますが、「呪いと殺しは飯のタネ」の似た作品として僕は「倒錯のロンド」があると思いました。

「倒錯のロンド」は折原一さんが書かれたミステリーで、「呪いと殺しは飯のタネ」と同じく作家が出てきて作家の一人称で書かれるという作品になっています。

「呪いと殺しは飯のタネ」はシンプルな話でワクワク感を誘うミステリーとして素晴らしい印象で、「倒錯のロンド」はワクワクからの世界が何回もひっくり返される感覚を味わえる作品となっていました。

「倒錯のロンド」と比べてしまうと「呪いと殺しは飯のタネ」はどうしても驚きが少ないと感じてしまうのです。

「呪いと殺しは飯のタネ」は決して悪い作品ではなく、むしろシンプルな話の展開に、しっかりと怖さや伏線があり、犯人が考えていたことに驚かされるのですが、「倒錯のロンド」ほどの大どんでん返しはありませんでした。

完全に好みになってしまいますが、叙述トリックのような伏線で最終ページあたりでゾクっとしたいという方は「呪いと殺しは飯のタネ」よりも「倒錯ロンド」の方をオススメします。

「呪いと殺しは飯のタネ」は逆に「倒錯のロンド」のように複雑になるミステリーよりも、サイコパスが出てくるようなシンプルながらゾッとするようなミステリーが好きな方に向いていると思いました。

「呪いと殺しは飯のタネ」はセリフのやりとりや話の展開が見事で、一気に読み切れてしまいました。

シンプルな分登場人物が少ないので、犯人が途中で容易に想像できてしまうのはマイナス点でしたが、動悸や犯人の論理的な筋道というのは読んでいて面白かったです。

烏丸が事件にどんどん首を突っ込んでいくのも面白く、明らかになっていく謎も読む手が止まらなくなる点でよかったです。

結構短い話であるとともに、テンポのよい書き方なので一気読みに本当にぴったりな作品だと思いました。

長くても驚きを求めるなら「倒錯のロンド」ですが、多くの方にオススメしたいシンプルかつ読みやすいのは「呪いと殺しは飯のタネ」であると思います。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの要約あらすじからいきます。

烏丸が依頼を受けるところまでは、あらすじ通りです。

フィクションである小説を書きたいものの、0から1を生み出す才能がないことに気づいた烏丸が苦悩し伝記作家として頑張っているところに、刺激を与えるという報酬がある依頼が舞い込んできます。

依頼内容は故人、深山波平の自伝を書いてほしいということで、波平の地元へと向かいます。

滞在は波平の豪邸に泊めさせてもらう事になります。

波平には奥さんであるシルビア、娘①瑠璃、娘②紅がいることをメイドのおばさん津万木望美から聞かされます。

そして、のちにシルビアは、自殺、瑠璃は意識が戻らない状態で豪邸に住んでいること、紅は行方不明・死亡扱いになっていることを知ります。

地元では深山家に起こった不幸を「呪い」と言んでいるのです。

不審な点が多い事に気づいた烏丸は自伝を書くにあたって、家族の死について調べ始めます。

すると、波平は妻であるシルビアが不倫をしているのではないかと疑っていることがわかるのです。

そして紅は波平の子ではないと、確信していることがわかります。

また、紅は失踪する前に魔女と同級生たちから言われている噂を知ります。

紅は変わった子で、動物を平気で殺したり、友達を言葉巧みに洗脳したりする技術に富んでいたのです。

波平と紅に興味を持った烏丸は伝記そっちのけで、彼らを題材にした小説を書こうと決意します。

調べがさらに進め、波平の豪邸の地下に拷問部屋と誰かを監禁していたであろう跡を見つけるのです。

そして一つの推理をします。

紅は失踪したのではなく、地下に監禁されていて、波平の死を受けて脱走したという推理です。

小説もそのような形で書いていると、メイドである津万木望美が夫の手によって殺されたというニュースを受けます。

ありえない、紅が戻ってきて、殺したんだという確信を持った烏丸は豪邸へと向かいます。

紅は確かに生きていて、津万木望美の次は姉の瑠璃を殺そうとしていたのです。

紅は実は、烏丸に波平の自伝を書いてほしいと依頼した人物でもあり、全ての罪を被せようとしていました。

ですが、津万木望美に計画がバレ殺し、そして父親に監禁されていた際に助けてくれなかった瑠璃も手にかけ、遺産を全て手に入れようとしていました。

烏丸はなんとか、瑠璃の殺害を阻止しますが、紅によって放火されます。

無事帰還することができ、話は一件落着しました。

烏丸はこの体験を小説として発表することで、賞に選ばれました。

目指していた小説家への再起に喜んでいるのも束の間、紅は実は放火したもののまだ生きていました。

烏丸の前に現れた紅、恨みのために殺されるかと思いきや、紅はもっと恐ろしいことを言うのです。

「今回の小説が面白かったから殺すのをやめた。面白くない小説を書いたら今度は絶対に殺す」と。

恐怖で慄く、烏丸でしたが、そもそも小説家は命懸けで小説を書いているんだと改めて思い直し笑って幕を閉じます。

以上が、かなり端折っていますが、あらすじになります。

紅の正体が実は〇〇だったと言う部分はあえて、伏せていますので、ぜひ本編で確かめてみてください。

解説(ネタバレあり)

「呪いと殺しは飯のタネ」は紅が実は生きていて〇〇として生活していたと言うのがミソになるミステリーだと思います。

なので、この記事ではあえて〇〇と言う部分を伏せて要約しています。

正直登場人物が少ないので、小説を読みながら、多分こいつ怪しいなと思います。

そして、8割くらいでその推理は正解です。

なので驚きという部分では少ないと思いました。

ですが、しっかりと伏線として、監禁後の生活やらどうやってこれまで生きてきたのか、烏丸が屋敷にやってきたタイミングでどうして計画が動き出したのかなどがありました。

背景がしっかりした小説なだけに、納得感が高く、小説としてのあらが見当たらない作品だと感じました。

波平の悪事を世間に公開するため、波平に監禁され拷問されていた際に見て見ぬふりをした姉への復讐という二つの目的のために動く紅は狂気そのものでした。

計画のピースとして烏丸を嵌めるというのも納得ができる動機であり計画だと思いました。

そのために、烏丸と体の関係になり精子を手に入れると言うのは王道ではありますが、アイデアの組み合わせとして素晴らしいと感じます。

トリックなど目新しさは少ないですが、シンプルな展開と台詞回しのテンポなど間違いなく名作と言って良い作品だと思います。

まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。

今回は、烏丸尚奇さんの「呪いと殺しは飯のタネ」を紹介してきました。

烏丸尚奇という作者がそのまま登場人物・主人公になる系の物語でした。

トリックに目新しさは感じませんでしたが、話の展開や構成などは素晴らしく、特にセリフのテンポが群を抜いてよかったと思います。

ページ数も少なめで一気に読める作品だと思いました。

シンプルさが光名作だと思います。

怖さがありつつも、なぜか納得してしまうそんな不思議な体験がした方はぜひ読んでみてください。

きっと恐ろしさと、美しさ、裏切られる楽しさを味わえるはずです。

では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

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