県警内部、全員が敵。
一人の刑事が逃亡しながら、警官殺しから始まる悪事を暴く。
設定だけで面白いってわかるのが中山千里さんの「逃亡刑事」になります。
この記事では、「逃亡刑事」のあらすじからページ数、書評、おすすめ度、一部ネタバレありの要約・解説を紹介します。
本選びの参考になれば幸いです。
では、行ってみましょう!
あらすじ
単独で麻薬密売ルートを探っていた刑事が銃殺された。
千葉県警刑事部、捜査一課の高頭班が調査にあたることになった。
一人の少年の証言を聞いた高頭班の班長・高頭冴子は、事件の真実に一人真っ先に辿り着く。
真犯人は警察内部にいたのだ。
決定的証拠を探す冴子だったが、真犯人の手の方が早く、真犯人によって冴子に警官殺しの濡れ衣を着せられる。
自分の無実を証明するには、少年を守りつつ真犯人の決定的証拠を掴むしかない。
少年と共に逃亡生活を仕入れられた冴子。
逃げ込んだ先は、無法地帯の大阪、A地区で様々な人に出会う。
その中で、冴子はこれまでの価値観が変わる出来事を目の前にする。
果たして、冴子は濡れ衣を晴らし、真犯人を糾弾することができるのか!?
本書の概要
ページ数
解説含めず、389ページ、全397ページでした。
読むのにかかった時間
大体、4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
基本、刑事・冴子視点を三人称で語る構成になっていました。
真犯人は割と序盤で明らかになり、いかに証拠を集めて逃走からの逆転ができるかという点が実物の作品になっています。
書評(ネタバレなし)
結末がとにかく気になる「一気読み必至」という垂れ込みは伊達じゃない!というのが感想です。
あらすじを読むだけでも絶対面白いやつ!ってわかると思いますが、安心してくださいあらすじだけでなく中身も非常に面白い内容でした。
男勝りの女性刑事・冴子の行動力と警察内部との抗争は手に汗握りながら、先が気になってページをめくる手が止まらなくなりました。
謎が非常にシンプルで真犯人自体も割と序盤でわかるので、とにかくどうやって冴子が証拠を見つけて逆転するかを待つだけという構図も良かったです。
わかりやすくて、どうなれば勝ちでどうなると負けなのかも非常にわかりやすかったと思います。
また、登場人物の一人である猛(たけし)という8歳の少年がちょっと生意気ながらも可愛いんです。
物語のキーを握っていながらも感情移入できる対象になっていて、物語に深みとちょっとした和みを作ってくれます。
ハードボイルドな女刑事と生意気だけど憎めない可愛い少年のタッグが良い味を出しています。
若干、冴子の口が悪すぎたり、他の人の口調も汚い言葉が多かったりしますが、概ね気持ち良い作品だと感じました。
ただ、伏線らしい伏線が少なく、一発逆転はするものの、ちょっと不服感は否めませんでした。
もっと、序盤のこの発言が実はキーになっていたのか!?みたいな展開が欲しかったです。
とはいえ、非常にワクワクして読めた一冊でした。
おすすめ度
おすすめ度は5点満点中4.5点です。
シンプルな物語ながらも逆転という最高の結末へ向かう点は非常に評価できる内容だと思います。
また、女刑事と少年というタッグも万人におすすめできる組み合わせで、読みやすいと思いました。
物語上どうしてもヤクザ周りの話が多くなってしまうので、5点満点ではなく0.5点引かせてもらいました。
あとは、伏線がもっと張り巡らされていて驚きがある意外なオチの方が好みでした。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
猛は、養護施設から脱走して入院している母親のお見舞いしようと決意して、施設から抜け出しました。
ふと、潰れたカーディーラーのお店に入ると男たちが怒鳴り合っているのを聞いてしまいます。
そして銃声も。
撃たれたのは警察官、そして、もう一人の男についてもしっかりと顔を見てしまった猛はなんとかその場を後にしました。
冴子は撃たれて死んでしまった警察官の調査を担当することになります。
そして、猛が現場を目撃したとの情報を受け聞き込みに行きました。
犯人の顔を見たという言質はとったものの、手持ちの資料に該当する人物はおらず署内から保護施設へと送って行こうとした際、一人の警察官とすれ違います。
猛が見た人物はその警察官だったのです。
その警察官は組織犯罪対策課の課長で、課長の犯行が明るみになったらとんでもない事態になります。
冴子はすぐに、課長の悪事を暴くべく動き出しました。
しかし、なぜか勘づかれ、逆に警察官殺しの罪を冴子になすりつけてきたのです。
冴子はこのままだと、猛の証言まで揉み消されると思い、猛と共に逃亡することを決意します。
逃げて、隠れて、課長の悪事の証拠を探して逆転を狙うのです。
ヤクザである山﨑に協力を要請し、大阪A地区というところに猛と冴子は潜むことになります。
A地区は非常に治安が悪く、警察官嫌いが集まる住人たちの街で、ヤクザも蔓延る無法地帯でした。
そんな中、生活保護受給者の人々と交流する機会がありました。
これまで警察に協力しない者は日本人失格とまで思っていた冴子でしたが、警察に反発する人にはその人なりの理由や信念があることを知っていきます。
隠れ住みながらも課長の悪事の証拠を探していた冴子でしたが、ついに課長に居場所がバレてしまいます。
課長は完全に千葉県警を操って冴子の逮捕に全力を注げるような形にしていました。
ついには冴子と猛は捕まってしまうのです。
証拠を掴む前に捕まってしまい、取り調べを受けていると、署内が突然大きく揺れるのでした。
地震かと思うほどの揺れに相手が怯んだ隙に、冴子は取調室から抜け出します。
猛も共に連れ出して、今度は大阪から千葉へ行き、証拠集めを再スタートさせようと企みます。
ですが、東京駅で待っていたのは課長の部下たち、猛を連れていかれ、「カーディーラーのお店で待つ」という言葉だけ残されます。
冴子は覚悟を決めて、課長の待つカーディーラーのお店へと向かいます。
待ち構える課長と部下たち、完全に冴子は劣勢で、猛も殺される直前。
そんなピンチを救ったのは、ヤクザであり冴子の協力者であった山﨑でした。
山﨑は山﨑の部下たちと共に、課長と部下の数を上回る数で取り囲み動画を生配信していたのです。
それによって、課長の悪事は全て明るみになり、課長は逮捕されることになりました。
冴子はカーディーラーに来る前に、山﨑に連絡をして罠を張っていたのです。
まんまと罠にハマり自分の悪事を口に出してしまった課長は逮捕され一件落着となりました。
騒がしい千葉県警となった中、冴子は千葉県警の本部長の元へと訪れるのでした。
本当の黒幕を決して冴子は許さないのでした。
続編への考察(ネタバレあり)
続編があるかどうか、僕はあると思います。
そしてそうなった場合は、猛の成長をぜひ見たいと思っています。
猛は最後の最後で、「警察官になって会いに行く!」と叫んでいます。
これは完全にフラグですね。
猛が警察官デビューする次回作が確実にありそうです。
猛が冴子に対して抱いている感情が恋愛感情なのか、親への感情なのかはいまいちわかりませんが、今後警察官になるのは間違いないでしょう。
勉強を元々頑張っていますし、僕の予想としてはキャリア組みとして警察官になる未来が見えます。
とはいえ、冴子は32歳、猛は8歳なので、仮にストレートで猛が警察官になったとして22歳、冴子はその時46歳なので、恋愛要素は少なそうです。
先輩刑事として猛に刑事とはなんたるかを教える師弟関係が一番しっくり来る気がします。
「こんなに立派になって、と猛の手を握ってそう思った」みたいなことになってほしいです。
と、続編があってほしいと思っていますが、物語としてはきっちり完結しているので冴子を主人公とした別物語(猛が登場しない)バージョンの方が現実的な気がしました。
乱暴な主人公で、嫌味たっぷりな口ぶりが多いですが、どこか憎めないキャラしてるんですよね。
きっとこういうキャラ好きな人は多いはず。
続編を期待しつつ、猛がめっちゃ成長して戻ってくる未来を願うばかりです。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、中山千里さんの「逃亡刑事」について紹介してきました。
ワクワクで一気読みしちゃう一冊でした。
警察官のドロドロした内部事情なんかも興味を注がれ、確かに警察が本気出したらこういうこともできるよなーと思ってしまいました。
信用って大事だなと改めて気付かされた内容でした。
ぜひとも、一度お手に取ってほしいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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