盗作と倒錯
どちらも「とうさく」と読みます。
ミステリーには時折出てくるダブルミーニング、一つの言葉が二つの意味を持つというミステリーでよく使われる叙述トリックです。
今回紹介する折原一さんの「倒錯のロンド」もまさに倒錯と盗作をうまく組みあがった見事な叙述トリックミステリーで、ラストはまさにひっくりにひっくり返る倒錯な作品でした。
ここではそんな「倒錯のロンド」の書評とネタバレ要約、ネタバレ解説を行なっていきます。
ネタバレが嫌な方はネタバレありという表記の部分はみないようにしてください。
では、行ってみましょう!
あらすじ
山本安雄はようやくの思いで、人生最高傑作の推理小説「幻の女」を書き上げた。
受賞間違いなしという自信と共に推理小説新人賞に応募しようとしたが、不注意にも「幻の女」を落としてしまう。
そして、推理小説新人賞の発表では同タイトル「幻の女」の作品が受賞作となっていた。
作者は白鳥翔。
山本は白鳥が自分の書いた「幻の女」を拾って盗んだと確信し、主張するが誰も信じてくれない。
それでも、山本は執念で盗作者である白鳥翔を追い詰めていく。
果たして、盗作を認めさせることができるのか。
また盗作と共に発生する殺人事件と殺人未遂はどのように関わってくるのか。
最後の最後まで気が抜けないまさに倒錯のロンド、目まぐるしい逆転に次ぐ逆転の展開に読む手は止まらなくなる!!
本書の概要
ページ数
全396ページです。
読むのにかかった時間
トータル2時間30分ほどで読むことができました。
最後は怒涛の展開で一気に読め、オチまでの章もどうなる?どうなる?という感じでかなり読むペースは早いと思います。
構成
日記帳で書かれている視点(山本)と三人称視点で書かれている(白鳥)を交互に繰り返しながら進んでいくストーリーです。
文章の読みやすさは高く、情景を描くこともないためイメージもしやすい作品でした。
たた登場人物への感情移入はしづらい作品で、なんでそんな選択をするの?といった登場人物への理解不能さが出てくる部分はあったりします。
書評 読む手が止まらなくなる(ネタバレなし)
「途中まで読んだら、もう止まらなくなります。」
これが僕が「倒錯のロンド」を読んだ一番の感想です。
割と序盤で本書のテーマである盗作が発生し、盗作者を追い詰めていくシーンも手に汗握りつつ、ワクワク感でどんどん先が気になって読み進めました。
一旦、盗作事件が落ち着いて、話がまとめられるかと思いきや、そこからは倒錯の連続でした。
倒錯とは、「逆になる、または逆にすること。ひっくり返ること。ひっくり返すこと。」だそうです。
まさにひっくり返りにひっくり返るこれまで読んでいたものが、誰のものなのか目まぐるしく変わっていきます。
まさにロンドというダンスを踊っているような感じで読んでいるこっちが振り回されます。
ですが決して、意味わからないということや理不尽すぎる!ということもないので、納得して酔いしれることができます。
伏線が凄くて一発逆転というよりもこれまでの常識がどんどん覆されていく系でした。
最初のえ?ポイントでは鳥肌がたちましたが、その後はえ?え?という感じで鳥肌を感じる間もなく都道の展開でした。
最後の章に手を進めたらきっと、最後まで止まれないと思いますので、読む際は最後の章の時間は十分に取っておいた方が良いと思います。
また、読み終わった後、すげぇというため息と興奮を抑える時間が必要になると思いますので、寝る前は読まない方が良いですね。
途中で寝ようなんて甘いことはきっと「倒錯のロンド」ではできないと思います。
おすすめ度
「倒錯のロンド」のおすすめ度は、5点満点中5点です。
文句なしで、万人におすすめできる作品です。
とにかくラストの怒涛の展開を読んで欲しくて、ジェットコースターに乗っているような感覚になれちゃいます。
「え!?」の連続。小説を読み慣れない方はこれを機会に小説の面白さにハマるでしょうし。
小説にハマっている方すらも驚きでより一層、小説を好きになることでしょう。
ぜひ、一人でも多くの方に読んでほしいです。
オチの要約(ネタバレあり)
ここから先はネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
ではネタバレありのオチまでの要約をします。
まず、「倒錯のロンド」の主な叙述トリックは一人称で書かれていた山本が応募していたのは第20回の新人賞ではなく、第21回の新人賞であり、
「幻の女」は第20回の受賞作で、そもそも山本は「幻の女」の作者ではなくただ書き写しただけだったのです。
本編を読んでいないとピンとこないと思いますが、山本はもともと盗作をしていた張本人であり、思い込みによって「幻の女」は自分が書いたものであると信じていたのです。
永島という「幻の女」を拾った人物は白鳥翔という名前で、第21回の新人賞に応募したわけですが、これまた既に本物の白鳥翔が第20回新人賞を受賞しているため盗作の盗作で落選していました。
永島と白鳥が別人であるというのが「倒錯のロンド」を紐解く際の重量なキーだったのです。
永島が山本の親友を殺し、山本自身も殺害しようとしていた人物であり、白鳥本人は本当にスランプのただの推理小説家だったのです。
要約だけだと訳わからない部分が多いと思いますので、ぜひ本編を読んでみてほしいです。
もしくはもっと詳しい話を聞きたいということであれば、コメントやDMいただければ返信もしくはそれ用の別記事を書こうと思います。
倒錯の解説(ネタバレあり)
ダブルミーニングである「とうさく」が今回の最大のキーポイントで、盗作された作品が実は山本自身盗作していたものでした。
山本は最終的にそれに気づき、新たに「倒錯のロンド」という名前で山本自身書き出すのですが、これまた不意なことによって白鳥に今度は作品が盗まれる盗作されてしまうのです。
しかし最後には、山本の母の手によって白鳥が刺され、山本の手に原稿が戻ってくるという結末になっています。
まさに二転三転するオチ、最後には山本の母が白鳥を刺すシーンなんか圧巻で、言葉になりませんでした。
これぞ倒錯、ひっくり返りにひっくり返り、なんなら「倒錯のロンド」の作品自体が盗作なのではという疑惑すら生み出す折原一さんの狙いがよくわかります。
目まぐるしい変化は僕のようなブログ記事では到底、説明しきれませんので、ぜひ読んでほしいです。
本来だったらもっと解説風を書きたいところですが、「倒錯のロンド」はあまりにも難しく全てのことが絡み合っているので、今回はこの辺にさせてください。
面白いということだけわかっていただければ幸いです。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は「倒錯のロンド」という作品を紹介してきました。
ネタバレ部まで読んでくださった方ありがとうございます。
正直オチをただ並べただけの章になってしまったので、参考にはならなかったかもしれませんが、面白いことは確実ですので、ぜひ一度お手に取ってもらいたいです。
作者の折原一さんは最後に「倒錯のロンド」の出来は90%とおしゃっていましたが、僕はそう思いません。
非常に良くできた作品でしたし、まさに倒錯のロンド、最後のオチがぐるぐる変わる部分はこれまで読んできた小説の中でも最高に面白かったです。
ジェットコースターで例えるなら、一番の山場がゴール手前にある感じ、一つの話が終わったなーと思ったところに急激な上昇と落下、回転、上下左右がわからなくなる感覚です。
間違いなく僕がこれまで読んだミステリーの中でもランキング10には入る作品だと思います。
今度はぜひ折原一さんの作品をもっと上手く要約できるようになりたいです。
では、是非とも僕と同様に「倒錯のロンド」で盗作によって倒錯し「とうさく」に酔ってみてください。
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