理系ミステリーシリーズの第3弾、「笑わない数学者」
森博嗣さんが描く大学教授と女子大生のコンビが贈るミステリー「すべてがFになる」の続編になります。
「笑わない数学者」は数学をテーマにしたミステリーでかなりの良作でした。
今回はそんな「笑わない数学者」の書評と内容についてネタバレ含みながらご紹介していきます。
では、行ってみましょう!
あらすじ
偉大な数学者が住む「三ツ星館」そこで開かれるクリスマスパーティが今回の舞台。
大学助教授の犀川と学生の西之園萌絵も同級生の誘いでクリスマスパーティーに参加する。
クリスマスパーティーでは偉大な数学者の天王寺翔蔵博士が庭にある大きなオリオン像を消してみせるパフォーマンスを行った。
その場にいた全員が驚き、どういったトリックかも全くわからないでいた。
一夜明けて再びオリオン像が彼らの目の前に現れた時、オリオン像のそばには一体の死体が見つかった。昨日まで一緒にいた家族が殺される形なので、その場にいた皆は驚きを隠せず恐怖した。
さらにもう一つの遺体が見つかり、恐怖も悲しみも加熱していく。
二つの遺体、どうしてオリオン像のそばに一つはあったのか。
どうしてもう一人の死人が出なければいけなかったのか。不可解な点が残る事件。
犯人はどうやって消えたはずのオリオン像の近くに遺体を運ぶことができたのか、またどうしてオリオン像の近くに遺体を置く必要があったのか。
この謎に犀川と萌絵の理系師弟コンビが挑む。
果たして殺人事件の裏に隠された秘密と殺人の手口を暴くことができるのか。
オリオン像が消えた理由とは、事件とどんな繋がりがあるのか。
数学者らしい定義で変わるミステリーを堪能できるのは「笑わない数学者」だけだ。
オチは読めたけど持っていき方が好き
「笑わない数学者」は「すべてがFになる」「冷たい密室と博士たち」に続く第三作目に当たる作品です。
三作品読んだ僕の勝手な順位は、1位「すべてがFになる」2位「笑わない数学者」3位「冷たい密室と博士たち」なので「すべてがFになる」が未読の方はまずは「すべてがFになる」から読んでいくことをおすすめします。
タイトルの伏線や散りばめられた伏線回収とあっと驚くトリックは「すべてがFになる」が最高でした。
詳しくはこちらの記事で書評していますので、確認してい見てください。
2位に選べれた今回紹介する「笑わない数学者」はトリック自体は薄々感づくものになっていましたが、綺麗にまとまった話だと感じました。
王道のミステリーらしく犀川(探偵役の主役)がきっちりと謎を解き、皆の前でわかりやすく語ってくれるところもありました。
「冷たい密室と博士たち」でも謎解き部はあったのですが、トリック自体も期待より現実的すぎて面白さに欠けた部分があったのです。
「笑わない数学者」ではトリック自体のオリジナリティは低いですが、トリックに気づく伏線が面白いと感じました。
よくコナンくんとかがピシャん!という効果音とともに閃くシーンが「笑わない数学者」でもあるのです。
思考が加速して考え出す犀川助教授にもキュンでした。
今回の「笑わない数学者」はミステリーらしく、事件が起こり、考えるも解けない、ちょっと踏み込んだ捜査をしてヒントを見つける。
そうしてようやく謎が解けてスッキリするという流れに沿った物語でした。
なので多くの方が望む王道ミステリーだと思います。
途中で出てくる数学の問題やら「定義とは?」みたいな部分は理系っぽい話も入っており正直クエスチョンマークになる部分もありますが、面白い考え方を学べる部分でもあると思います。
理系の理系っぽい話を楽しめるのもこの犀川シリーズだと僕は思っています。
「すべてがFになる」の方が僕としては驚きのトリックと斬新な伏線回収で震えましたが、王道は外れていると思いました。
なので一番最初に「笑わない数学者」を読んでもいいかもしれません。
間違いなく、探偵がしっかりと謎を解くという王道のミステリーが好きな方は「笑わない数学者」を堪能できると思います。
ドキドキハラハラを含んだアクションあり
助手役でもある萌絵が事件に必要以上に首を突っ込んで危ない目に遭うのは2作品目の「冷たい密室と博士たち」でもありました。
「笑わない数学者」でもハラハラドキドキのアクションシーンを楽しむことができるのです。
なんとなくこれまで以上にアクションシーンが多かったと思います。
これまでは肉体派というより頭脳派たちの話だったので、体の動きはあまりないのが特徴の小説でしたが、今回の「笑わない数学者」では結構登場人物の動きがあって、映像が目に浮かび楽しみやすいとも感じました。
僕は映画でもアクションが多めが好きなので、小説でもアクションがあるとワクワクが増して楽しさが倍増します。
ミステリーの中に潜むアクションシーンも楽しみながら「笑わない数学者」を読んでみてください。
萌絵が頑張る姿に心を打たれる男性諸君も多いはずです。
謎を含んだ終わりがまたいい(ネタバレあり)
ここからは、ネタバレを含みますので、未読の方でネタバレが嫌な方はまとめの部分まで飛んでください。
今回のトリック、オリオン像が消す方法はそもそも向きが違かったというものでした。
方角という定義が誤っているために生まれたトリックという解説でした。
独自性は少ないですが説明としてはリアルかつ斬新だったのでよかったです。
僕はさらに最後の最後が好きでした。
全ての事件を企んでいた感じを出しつつ博士は死んでしまいます。自殺?と思ったらまた最後の最後で数学者っぽい人が出てくる。
どこかで聞いたことのあるようなセリフを女の子に言うのです。
一体死んだのは誰だったのか、行方不明になっている登場人物(博士の息子)と入れ替わっていた説もあります。
地下室に閉じこもっていた数学者という定義が難しい。考察のしがいがあるテーマだと思います。
僕は本物の博士はすでに外に出ていた説が有力だと思います。
犀川が博士に初めて会った時、想像通りすぎて萎えたという発言をしているからです。
イメージ通りすぎる博士は本物の天才ではないというのを表現したかったのではないかと思うんです。
シリーズものなので今後また絡んでくる可能性もあるんでしょうか?
あと7作品残っていますので、楽しみにしたいと思います。
犀川と萌絵の恋愛関係に進展あり?(ネタバレあり)
ここからは、ネタバレを含みますので、未読の方でネタバレが嫌な方はまとめの部分まで飛んでください。
萌絵の猛アピールがすごかったのも「笑わない数学者」の特徴だと思いました。
もうさっさと付き合えよ。って思う場面が多々ありました。
萌絵普通に可愛いんですよねぇ。
最後の「クイズに解けなかったらキスしてください」なんてヤバすぎですよね。
クイズに答えるか否かを考える犀川もまた甘酸っぱかったです。てか、犀川、悩むってことは言うほど萌絵のこと遠ざけているわけではないってことでいいんですかね?
もしかして今後はもっと付き合う的な展開になるんでしょうか?
せっかくの師弟コンビがカップルになったら、それはそれで良いですけど、イチャイチャ謎解きはちょっとごめんですね。
恋愛よりミステリーに重きを置いてほしいです!w
恋愛模様にもかなり動きのあった回だと思います。
今後、犀川と萌絵の関係はさらに深くなるのでしょうか?僕だったら絶対萌絵に惚れてますね。
嫉妬する場面とか料理が下手だから料理教室に行くようにする話なんてもう可愛すぎですし。
恋愛系の小説は好きではないですが、ミステリーと絡むことで上手くいかない恋なんて描き方もできるのでちょっとだけ、ほんのちょっとだけですが恋愛要素も楽しみに次巻を読んでいきたいと思います。
まとめ
今回は「笑わない数学者」の書評とネタバレ解説を行ってきました。
トリックは斬新ですが独自性は低い印象でした。
その分アクションだったり恋愛に動きがあったりと他の要素で興味を引かせるうまさが光った一冊だったと思います。
数学者の話に頭が混乱する部分もありましたが、「定義」がどれほど大事かがわかる内容でもありました。
「定義」とは「ある概念内容・語義や処理手続をはっきりと定めること。それを述べたもの」
まだ未読の方は「定義」という言葉を意識しながらヒントにしながら「笑わない数学者」を読んでみるとさらに面白さが増すことと思います。
果たしてあなたの存在を定義してくれる人物は誰なのか?あなたがあなたを定義しているのか?
それとも誰かがあなたを定義しているのか?
小説を通して答えを見つけてみてください。
コメント