14歳の女子中学生が同級生を殺した。
犯人はわかっているものの、動機がわからないミステリー。
伏線が見事にはられ、最終的に綺麗な終わり方をする天祢涼さんの「希望が死んだ夜に」でした。
この記事では、そんな「希望が死んだ夜に」の一部ネタバレありで内容紹介をしていきます。
まさかまさかのオチが好きというミステリーファンにぴったりの作品でした。
では、いってみましょう!
あらすじ
神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。
ネガは犯行を認めるものの、その動機を一切語らない。
なぜ、のぞみは殺されたのか。
二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がる。
冬野ネガはシングルマザーでお金に困っている事実。
春日井のぞみは裕福な家庭で育っているという事実。
この二つの事実から単なる妬みが動機かと思われるが…?
現代社会が抱える闇を描いた社会派青春ミステリー。
あなたはこれを読んでもまだ、貧乏人は努力が足りないと言えますか?
本書の概要
ページ数
解説含めず303ページ、全308ページでした。
読むのにかかった時間
大体3時間ほどで読み切ることができました。
構成
刑事・真壁と仲田の二人のコンビをメインの視点で描かれており、随所でネガの一人称視点で描かれる構成になっていました。
事件を追う中で事件と解くヒントが出てくると、ネガの視点になり当時のことが思い出されるという構成です。
書評(ネタバレなし)
お金がない辛さに心打たれてたところに、ミステリーの怒涛の攻撃でふらふらになる作品でした。
「希望が死んだ夜に」はミステリーでありながら社会問題にも切り込んだ作品で、テーマが貧困です。
貧困家庭がどのような苦しみの中生きているのか。生活保護を受ければいいのにそう簡単にはいかない実情をうまく描いている作品でした。
と、思いきや急にミステリーの面白さが出てくる。
冬野ネガの真の狙いが見えたところで、一気に話が進みまさかの展開になるんです。
貧困に同情し、自分はなんて恵まれているんだろうと考えているところにこのミステリーの面白さはずるい。
伏線もうまく隠れていて、あのシーンが実は謎解きのヒントだったのか…!となりました。
ミステリーとしても完成されているのに、見事に社会問題を絡めているうまさが光る作品だと感じました。
ページ数としても決して長すぎない点も評価できて、非の打ち所がない作品です。
ただ貧困というテーマな分、お金の話が絶対やだ!という方は毛嫌いするかもしれませんね。
こういったお金の話に切り込むことこそが、重要でみんなで話し合うべきだと僕なんかは思ってしまいますが。
おすすめ度
天祢涼さんの「希望が死んだ夜に」のおすすめ度は5点満点中4点です。
多くの人に読んでもらいたい。
貧困というテーマでも多くの人に考えるきっかけになってほしいですし、何よりミステリーとして面白いんです。
最後なんてあっと驚く結末になるんですよ。
さらに最後のメッセージにはついつい感動して涙をこぼしそうにもなりました。
一生懸命生きること、人のためを想うことの素晴らしさがよくわかる内容でもありました。
ミステリー好きはもちろん、ミステリーをあんまり読んだことない方にも手放しでおすすめできます。
グロテスクなシーンはほとんどなく、エロいシーンもないので本当に万人におすすめです。
伏線で鳥肌になりたいという方にはおすすめできませんが、ミステリーとして普通のシーンが実は伏線というのはあるので伏線好きもなかなか楽しめると思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじを行っていきます。
春日井のぞみを殺した容疑で、同級生である女子中学生の冬野ネガが逮捕されました。
ネガは事情聴取に対して、反抗は認めるものの動機については語らないと言いました。
動機を明らかにせずに送検するわけにもいかず、二人の刑事、真壁と仲田は動機調べに奮闘します。
調査進める中で、冬野ネガの家庭は貧困で苦しんでいるということがわかり、春日井のぞみは裕福な家庭で育っていたということがわかりました。
ネガはのぞみに対する妬みで殺したのか?と見立てを立てますが、その後の調査で実はのぞみもまた貧困家庭で生活保護一歩手前だとわかったのです。
さらに、ネガとのぞみは貧困という共通点から仲良くなり、秘密のバイトを共有しながら親友へとなっているとわかりました。
では、親友だったのぞみをどうして、ネガは殺したのか。
のぞみは殺される直前に親と言い争いをしていたことがわかり、事態は動き出します。
のぞみは親との喧嘩の中で自分の唯一の生きる希望であったフルートを辞めさせられそうになったのです。
一方ネガもずっと憧れていた近所のお姉さんが風俗嬢になって、輝いていた目が死んでいることを知ります。
二人は同じ日に生きる希望を失っていたのです。
ネガとのぞみは、絶望を語り合い、一緒に死のうと決意します。
そして、ネガは自殺のための練炭を買いに行き、戻ってきたところでのぞみだけ首を吊っているシーンに出くわすのです。
一人で死んでしまったと思いきや、ネガは「自分を置いてのぞみが死ぬわけがない。このままだと自殺で処理されるから自分が殺したことにして警察に真犯人を探してもらおう」と決意しました。
ネガは実は殺していない。ということが判明しましたが、警察の調べだとのぞみの遺体には怪しい点がなく見るからに自殺だと思われました。
真壁もその結論で、ネガがのぞみは自殺ではなく他殺だと思い込みたいだけなのだと考えます。
しかし、仲田だけがその事実を否定し、ある推理を巡らせて真犯人を見つけるのです。
真犯人は身近にいて、のぞみはその人に殺されたのでした。
のぞみが書いたとされる遺書にはネガに対する気持ちが書かれていて、生きてほしいというメッセージが込められていたのでした。
あえて、犯人は誰であるのかを濁していますので、是非とも本書で犯人は誰でどういった経緯で殺されたのかは確認してみてください。
のぞみの行動について考察(ネタバレあり)
ここではのぞみが最後にとった行動について考察していきます。
のぞみは、ネガがいない間に遺書を書いていました。
遺書の内容は、ネガを睡眠薬で眠らせている間に自分だけ自殺するという告白文でした。
のぞみは最初からネガと一緒に死ぬ気はなく、自分だけが死のうとしていたのです。
そんな中に真犯人が現れて、のぞみは殺されてしまいました。
のぞみはその時抵抗することなく死にましたが、実は真犯人に殺される必要もなく死を覚悟していました。
そもそも真犯人が現れなければ事件にはならず、のぞみは一人で自殺していたという事実になっていたのです。
最後にのぞみはネガに自分の自殺の姿を見せて、死ぬのは怖いということだけ伝えたかったというのが最後ののぞみの望みでした。
結果的には遺書の全文を見ることになったネガは刑事たちに死にたいと言って話は完結しました。
果たして、この後ネガはのぞみの願いである生きることをするのでしょうか。
こればっかりは願うことしかできません。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は天祢涼さんの「希望が死んだ夜に」を紹介してきました。
社会問題とミステリーが上手く絡み合った見事な作品だと思いました。
真犯人はネタバレ部でも書かなかったので是非とも本書を読んで体験してみてほしいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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