不審な死を遂げた女装した学生。
そこから二転三転と真実が明らかになっていく様は圧巻でした。
今回紹介するのは歌野晶午さんの「死体を買う男」です。
本格推理ものに分類される本作は、最後の最後で話が二転三転と変わってきて最後の最後までオチが読めないミステリー小説でした。
この記事では、あらすじから、書評、おすすめ度、一部ネタバレありの内容要約を行っていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
乱歩の未発表作品が発見された?「白骨鬼」というタイトルで雑誌に掲載されるや大反響を呼ぶ小説。
南紀・白浜で女装の学生が首吊り自殺を遂げる。
男は毎夜、月を見て泣いていたという。
乱歩と詩人・萩原が事件の謎に挑む本格推理。
という作中作と絡み合う現実世界。
果たしてこの作品に格差た二重三重のカラクリを暴くことができるか?
本書の概要
ページ数
解説含めず341ページ、全349ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
「白骨鬼」という小説が紹介される中で、「白骨鬼」の作者とまた別の主人公・細見が出てくる長編ミステリーでした。
「白骨鬼」という作中作の中では、一人称視点で江戸川乱歩が謎に挑んでいく姿。
現実世界では「白骨鬼」を書いた作者と細見が絡み合うシーンが描かれるという構成になっていました。
作中作の文章は時代背景に合わせて若干現代語よりも古い言い回しが多かったです。
また、作中の中で時々詩も含まれる構成になっていました。
書評(ネタバレなし)
おーーすごい!とはなるけど手放しで面白いかと言われると正直うーんって感じです。というのが僕の感想です。
二転三転する物語や、タイトルの意味という仕掛けは面白いものの、盛り上がりに欠ける気がしてしまいました。
興味がそそられない事件というのが大きいのかもしれません。
奇妙な死体が消えた。怪しげな双子が事件に絡んでくる。というだけでおおよその流れはわかってくるのも理由かもしれないです。
確かに二転三転する事件であり物語ではあるものの、驚き度的には、階段を二、三段強制的に下ろされたくらい。
びっくりはするものの、想定の範囲内かつだから?みたいな感想になってしまいました。
また、作中の中で古い言い回しが多く、江戸川乱歩好きにはたまらないのかもしれませんが、現代小説派の僕はあまり好みじゃありませんでした。
なんとなく読みづらかったです。
また時々出てくる詩も僕にわからなかった。
なんとなく意味はわかっても、納得感がないので本当に言いたいことを詩で受け取るのは僕には無理なのでしょう。
ミステリーにドキドキ感とハラハラ感、大逆転により衝撃を求める人にはちょっと向いていない一冊かもしれないと思いました。
おすすめ度
歌野晶午さんの「死体を買う男」のおすすめ度は5点満点中2点です。
正直、あんまりおすすめはしません。
衝撃的な二転三転の物語!と謳ってはいますが、衝撃に慣れすぎた僕としては想定範囲内かつだから何が変わるのか?という冷めた目で見てしまいました。
衝撃的な逆転の作品をあまり読んできてない人にはちょうど良い入りかもしれません。
歌野晶午さんの作品なら「葉桜の季節に君を想うということ」の方が衝撃的ラストがあってすごかったですね。
ただ個人的に「葉桜の季節に君を想うということ」のトリックは好みじゃなくて、正直ずるすぎる!って思っちゃってますが。
グロさという面では「死体を買う男」ではほとんどそういった描写はありません。
なので、ちょっとした衝撃を味わいたくてかつ本格推理ものを読みたい方にはぴったりの作品だと思います。
ちょっとクセのある文章でもあるので、江戸川乱歩好きにもおすすめできますが、それ以外の方には他の小説を読む方が良い。と多分僕は言いますね。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
細見辰時は有名な小説家だったが、ある時から筆を置き時間が経っていた。
そんなある日、不思議なミステリーに出会う。
「白骨鬼」と名付けられたミステリーだった。
その内容は江戸川乱歩らしき人物が事件に巻き込まれるというもので、細見は興味を惹かれた。
江戸川乱歩は執筆から逃げるべく、白浜にやってきていた。そこで出会った青年に命を救われた。
乱歩はその青年と宿も一緒だったことを知るのと同時にその青年が実は、異様な人物として宿内で騒がれていた。
青年は夜な夜な女装して、月を見て泣いていたのだった。奇妙なその姿を見た乱歩もまたゾッとした。
そんな次の日、その青年が首をつって死んでしまったという話を聞く。
現場に向かうも奇妙なことに遺体は発見されたのちに、忽然と姿が消えたというのだ。
第一発見者は脈を確認し、確実に死んでいるだろうと思い、人を呼びに行っている間に消えたとのこと。
謎が深まるばかり。
そんな一章を終え、細見は「白骨鬼」の作者と会う機会に恵まれる。
細見は作者にこの作品は自分の作品ではないだろう?と詰め寄ります。作者は死んだ祖父が残したノートをもとに作成した内容だったと吐露する。
そして細見は「白骨鬼」の作者に、「白骨鬼」を自分の作品として出させてほしいと言うのだった。
憤慨する作者に相手にされずに、細見は帰路につくことになる。
乱歩は友人である萩原とともに事件を追うことにする。
すると、死んだと思われた青年は双子で、双子の弟である塚本均が怪しいと考える。
さらに死んだとされる青年の死体が見つかり、双子の死体入れ替えが行われたと断定する。
死んだ青年・塚本直と塚本均は入れ替わっていると言うのだった。
そして、証拠を突きつけるためにも罠を張ることにする二人。
そんな中まんまと均は罠にハマり、真実が明らかになる。
死体の正体は均で、殺したのは父親、2年に渡り直は二重の生活を行い均と直が生きているように偽装した。
そして、最後の最後に直は均を死んだことにしようとしたものの、良心の呵責で直を死んだことにして、均として生きていこうと決意したのだという。
事件はそれで幕を閉じるはずだった。
現実世界に戻り、細見に詰め寄る「白骨鬼」の作者。
「白骨鬼」の内容は実は細見自身のことを指しているのだと詰め寄るのだ。そしてそれはまさかの正解で、白骨鬼に出てくる均とはまさに細見のことだったのだ。
細見は自分が犯してしまった罪を告白するべく「白骨鬼」を自分の作品として世に出そうと考えていたのだった。
そして、最終章として事件の真相を語る。
死んだのは本当は直で、生き残ったのは均だった。
父親が均だと勘違いしたのは、直と均が時々やっていた双子交換によって騙されていたためというもの。
真実が明らかになる最終章を細見自身が書きあげ、最後にこの小説にふさわしいタイトルをつける。
それが「死体を買う男」なのだ。
タイトルに隠された意味
全部を読み終わって残る疑問、「死体を買う男」とは何なのか。
作中の最後に名付けられたこのタイトルはどういった意味があるのか。
このタイトルの意味を暴くために重要なのがアナグラム。
作中でも度々出てきたアナグラム。ローマ字に置き換えてから並び替えると浮かび上がってくる別の意味の言葉。
作中だと犯人の名前が小松利人(こまつ としひと)→塚本均(つかもと ひとし)→細見辰時(ほそみ たつとき)というアナグラムが紹介されていました。
この法則が実は「死体を買う男」にも適用されるのです。
「SITAI WO KAU OTOKO」を並び替えると「TOOI KAKO WO SITAU」
「遠い過去を慕う」となります。
実はタイトルの段階で、これが過去の出来事で思いふけっている様子が明らかになっていたのです。
このタイトルから全てのトリックを見破るのは不可能ではあるものの、実は主人公が真犯人で過去だったというのは推測できたかもしれません。
いや、流石に無理ですかね。
でも、こういったタイトルに伏線や仕掛けがあると面白いですよね。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
二転三転があって面白いものの、正直衝撃は少なかった「死体を買う男」を紹介してきました。
江戸川乱歩好きにはたまらない内容だったのでしょうか。僕は乱歩ファンではないのでいまいち良さはわかりませんでした。
この機会に江戸川乱歩を読んでみるのもありかもしれませんね。
ただ、現代語のテンポが好みの僕には合わない可能性も高そうです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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