今の政治家に満足していますか?
不満であれば、ぜひあなたの手で変えてみる気はありませんんか?
今回ご紹介する小説は、中山千里さんの「総理にされた男」という一冊で、ある日一般人の男の人が総理になるというぶっ飛んだ設定でありながらノンフィクションのように楽しめる内容です。
総理大臣になったら、なんでも思い通りになると思いきや、悩ましい日本の情勢や政治の難しさがわかる内容になっていました。
政治も経済も学びつつ、ワクワクしながら読める小説なので超おすすめです。
この記事では、あらすじから、書評、内容要約をネタバレを一部含みながら紹介していきます。
では、行ってみましょう!
あらすじ
加納慎策(かのう しんさく)は売れない俳優で、舞台の前座として現総理大臣・真垣統一郎のモノマネをして食い繋いでいた。
そんなある日、真垣が意識不明の重体になってしまったことをきっかけに慎策が替え玉にさせられることになる。
一般人から突然総理大臣になった慎策、持ち前のモノマネでうまく立ち回りつつも、問題がいくつも露わになっていく。
野党や官僚との戦い、そして海外に起こる史上最悪の事件まで…
果たして慎策は無事に総理大臣をやり切ることができるのか?
政治経済外交に至る日本の論点がわかる痛快エンタメ小説!!!
本書の概要
ページ数
文庫サイズで解説含めず421ページ、全429ページでした。
読むのにかかった時間
文字が1ページ一杯に埋められる箇所もあり、だいたい6時間半ほどで読み切ることができました。
構成
基本慎策視点の三人称という文体で書かれていました。
政治用語や経済用語などは慎策が一般人という設定から、自然に説明してくれるので政治経済を知らない方でも楽しむことができる内容でした。
ただ、ぼーっと読んでいると置いて行かれてしまう内容になっていたり、1ページの情報量が多い点がありました。
書評(ネタバレなし)
こんな総理大臣がいたらいいのになぁ、っという感想に尽きる物語でした。
主人公であり、突然総理大臣になることになった慎策は本は素人なので、一般人が思うようなことを率先してやってくれるのです。
そして思っていることをぶつけてくれるので、読んでいてスッキリする感じがしました。
また、単にスッキリするだけでなくやりたくてもできないという政治のジレンマというのもわからせてくれる内容でした。
総理大臣の鶴の一声ではいかない点や、派閥、メディア、官僚とドロドロした部分をリアルに描くことで単に一般人が考えつくことを実践しない理由なんかが見えてくるのです。
消費税増税をなぜするのか、一般人目線だと理解できないことも国のことを考えると納得する理由が説明されます。
なるほどなぁと思いながら、それでも国をよくしようと奮闘する慎策の姿がとにかくかっこいいんです。
政治経済を学びながら、一般人が総理大臣になったらどうなっていくのかというシミュレーションを見ることができる一冊になっています。
こんな小説読んだことがありません。
物語としても面白いですし、メッセージ性も非常に良かったです。
ラストで慎策が国民に投げかける言葉なんかは本当に、僕自身にも響きました。
現在の政治に不平不満を言うだけでなくしっかりと行動に移すことが大事である、国民にも責任があると言った言葉は耳が痛くなりました。
腐った政治家を選んでいる僕たちも悪いのかもしれないと思わせてくれました。
勉強になりながら、ここまで心響くメッセージのある小説は2022年に読んだ小説の中でも一番です。
日本に生きるすべての人に読んでほしいと思いました。
丁寧な政治経済の説明と面白い小説が合体した、これ以上ない素晴らしい一冊だと思います。
若干文章が多く、法律やら政治経済の話も出てくるのは敬遠する方もいるとは思いますが、最後までぜひ読んでみてください。
政治への関心が高まること間違いなしです。
久々に良い小説に出会うことができて、気分がいいです。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、まずネタバレありのあらすじ・要約からやっていきます。
顔が似ている点とモノマネが完璧という点から内閣官房長官・樽見によって総理大臣・真垣統一郎の替え玉をすることに慎策がなります。
なんとかモノマネの技術で周りの人を騙していきますが、政治経済の知識の不足を知り、昔の友人である准教授・風見を参謀として頼ることになりました。
風見は適切なアドバイスと政治経済の知識を慎策に教えながら、閣僚や野党とのやりとりを乗り切っていきます。
そして、いよいよ政治がうまく行っていなかった元凶、官僚との戦いになります。
官僚の人事権を政府が握ることによって、官僚が裏から政府をコントロールしていた従来の構図を変えようとする慎策と樽見。
奮闘の末、慎策の話術、純粋さによってなんとか官僚の人事権を手に入れた慎策と樽見は一安心します。
そんな中、本物の真垣統一郎が死亡したとの連絡が入り、一定期間の替え玉と思っていた慎策でしたが、今後も替え玉を続けなければならなくなりました。
さらに、そんな慎策を見て友人である風見は手を引くように慎策に助言します。
その助言を良しとしなかった樽見は、風見を外国においやってしまうのです。
慎策は頼るものを失いつつも、責任感から総理大臣を続けるしかありません。
そして最悪の事態、アルジェリアの日本大使館がテロリストによって占拠されてしまうのです。
日本は憲法によって手出しができず、手をこまねいているしかできないことに慎策は憤りを感じます。
テロリストは交渉時間を設定し、それまでに3時間ごとに一人人質である日本人を公開処刑すると言い出します。
3時間が経ち、一人が、もう3時間が経ちもう一人が殺されます。
残酷な話はまだ終わらず、多忙によって樽見が心筋梗塞を起こしてしまうのです。
そして息を引き取る樽見、完全にアドバイザーを失った慎策、慎策の替え玉を知る人物も他にはいなくなってしまいました。
テロリストが掲示する3時間という時間も刻々と迫っています。
そんな中、慎策は総理大臣として一世一代の決意をするのです。
アルジェリアの大使館に自衛隊を派遣してテロリストを制圧する決断を。
それは誰しもが憲法違反だと思える内容でした。それでも日本人を殺されるのがもう我慢できない慎策は強行します。
最終的に死者を出しながらもテロリストを制圧することに成功しましたが、今度は違憲ということで大バッシングを受ける慎策。
総理大臣辞任かとなったところで、慎策は国民に演説をします。
最後に自分が信用できるかどうかを国民投票という形で確認したいと促すのです。
結果は…慎策の思いが伝わり続投となり、話は終幕となりました。
解説(ネタバレあり)
解説部では、慎策がどうして孤立してしまったかとこれからどうなっていくかを考察していきます。
最終章前に慎策は完全に孤立した状態になってしまいます。
友人であるアドバイザーであった風見は樽見の手によって海外赴任になってしまい、そんな樽見は多忙による心筋梗塞で亡くなってしまいます。
慎策が替え玉であるというのを知る人がいない状態になってしまうのです。
そんな中、慎策はある一人の人物だけになら打ち明けられると確信します。
それが、総理大臣の替え玉前に付き合っていた珠緒です。
最終的には珠緒に秘密裏に会って「ファーストレディになってくれ」という言葉を送りました。
これはつまるところ、珠緒に対するプロポーズになります。
また慎策は真垣統一郎として、総理大臣として生きていくという意味とも受け取ることができます。
国民投票の結果、これからも総理大臣という座をこれからも続けていくというのと共に、慎策の心としても総理大臣として生きていくという言葉だと推察します。
慎策は国のためにこれから奮闘していくというのが、慎策のこれからの考察になります。
ですが、あえてこの先を深読みすることによって批判して終わろうと思います。
慎策は一般人から急に総理大臣になったために、政治活動に対してフレッシュな目線で挑むことができたため国民の意見に合った政治ができていました。
ですが、おそらく今後総理大臣の任が長くなるにつれ、フレッシュさが失われていくのではないかと思います。
そして、最終的にはこれまでの総理大臣や落ちぶれた政治家のようになっていくのだと思うのです。
「総理にされた男」の続編があるのなら、きっと慎策は落ちぶれていくことでしょう。
と「総理にされた男」自体が非常によくできた話すぎたので、批判的な感想も書いてみました。
皆さんもぜひ、自分の目で、こんな政治家がいてほしいか、いてほしくないか、ただの理想論だと思うところを見つけてほしいです。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、中山千里さんの「総理にされた男」を紹介してきました。
政治、経済の勉強ができながら、政治について考えさせられる非常に面白い小説でした。
リアルとフィクションがうまく混ざり合い、ハラハラドキドキもある見事すぎる作品だと感じました。
ぜひ、皆さんもこんな総理大臣いてほしいか?という目線で読んでみてほしいです。
では、国民の皆さんの幸せがもっと広がることを祈っています。
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