死という概念がなかったら。
神という概念が本気で信じられていたら。
今回は、近未来とミステリーが見事に融合した森博嗣さんの「女王の百年密室」を紹介します。
独特な世界観で、ミステリーとSFが融合した内容で死と神という宗教のような内容が密接に関わってくる内容でした。
この記事ではそんな「女王の百年密室」のあらすじから、ページ数、一部ネタバレありの要約・解説を行っていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
旅の途中で道に迷ったミチル(主人公)とウォーカロンのロイディ(俗にいうロボット)
迷った末に高い城壁に囲まれた街にたどり着く。
高貴な美しさを持つ女王、デボウ・スホの統治の下、百年の間完全に閉ざされていたその街。
2113年の未来にあるこの街で、100年で初めての殺人事件が起きた。
謎と秘密に満ちた世界で、生きるとは何なのか、死ぬとは何なのか。
不思議な世界で殺人事件の謎が世界を揺るがす…!
本書の概要
ページ数
解説含めず583ページ、全597ページでした。
読むのにかかった時間
改行が多いページもあり、だいたい7時間ほどで読み切ることができました。
構成
主人公のミチルの視点で僕という一人称で書かれる構成になっていました。
ミチル自身の心の声が非常に多く、セリフよりも一人語りや状況説明が多い印象でした。
書評(ネタバレなし)
独特な世界観と、オチはかなり面白けど、とにかく長すぎる!!!というのが僕の感想です。
SFの世界とミステリーが見事に絡み合っているのは圧巻で、どんどん世界観に引き込まれていきました。
ただ謎とそれまでの過程の面白さが僕には乗り切れない部分でした。
激しいアクションがあるとか、いよいよ主人公がやばくなるというドキドキ感はちょこっとだけで、もっとハラハラさせられたかったです。
淡々と危険や事件が進んでいくのがどこか寂しいような人間味がないような気がしました。
まぁこの部分も含めて伏線なのかもしれませんが!!!
ミステリーをしっかりと読み込んで味わい尽くせる方なら非常に面白い!って評価になるのかもしれませんが、僕のように浅い気持ちでミステリーを楽しんでいる身としては長いだけだなぁと感じてしまいました。
ただ長いと感じさせないテンポの良い文体はさすが森博嗣さんでした。
長いとは感じないものの、読み終わった時に長かったと感じ、オチとしても長い割にこれだけか?ってなってしまう満足できない感じが残りました。
ミステリーのオチとして決して弱くなくて、さらに盲点だったことは確かです。
実際僕もこの結末は読めなかったです。
ですがどうしても、ワクワク感、ハラハラ感、最後の逆転感が薄い。
SF要素があることで面白さが倍増になった期待感によって余計にそう感じるのかもしれません。
僕はつくづくSFとは相性が悪い可能性もありますね。
ぜひとも、僕とは違う感想を抱くために「女王の百年密室」読んでみて欲しいですね。
おすすめ度
「女王の百年密室」のおすすめ度は5点満点中2.5点です。
まずミステリー初心者や読書初心者の方にはおすすめしません。
非常に長いですし、ミステリーとして決して王道ではないと感じたからです。
SFとミステリーが見事に融合し、そこに哲学というスパイスがあるのは面白かったのですが、難しいなぁという印象が強かった。
ミステリーのオチはかなり良かった部類になりますが、そのオチにしては前振りが長すぎるな…という印象を持ってしまいました。
なので、じっくり腰を据えて読むことができるという方にはお勧めできますが、さらっとミステリーを楽しんだり、伏線に震え慄きたい方にはおすすめできませんね。
森博嗣さんの作品なら僕は「すべてがFになる」の方がおすすめで好きでした。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじやっていきます。
ミチルは三日間彷徨っていました。取材という仕事のために目的地を目指していたはずがGPSが壊れ道に迷ってしまったのです。
ミチルと共にいるのはロイディ。ロイディはウォーカロン、いわゆる超高性能ロボットでした。
二人は彷徨う中で一人の老人・マイカと出逢います。
彼に言われるがまま近くにある街に二人は赴きました。
「神に導かれた」という言葉を言えば街に入れ、ご飯を出してくれるだろうといったマイカの言葉を信じ、言われるがまま街へそして街を統治する女王の元へと行きました。
女王は神の声が聞こえる存在として認知され大きな宮殿に住んでいました。
女王は既にミチルのことを知っていて、話はすぐに通りしばらくの間宮殿にする住めるようになったのです。
しばらく街の独特な雰囲気を味わっていると色々なことがわかってきました。
街には数百人の人しかおらず、外界とは隔離されていること。
外との連絡手段が一切なく密室な街であること。
死という概念がなく一般的な死=長い眠りについている状態。
神が存在し、神様を見ても絶対に他言したりそもそも見てはいけないこと。
不思議な宗教な、哲学的な話を知り、好奇心に溢れるミチルとロイディでした。
そんなある日、事件が起きるのです。女王の息子である王子の一人が殺されたのです。
ただミチルだけがこの殺人を殺人事件として認識していました。
というのも街には死という概念がないので、あくまで王子は長い眠りについただけという認識で、悲しみはすれど犯人探しをしようとはしなかったのです。
警察はもちろん、罪と罰という概念もなく、全てが自由な街でした。
そんな中でもミチルは殺人はいけないことだと叫び、犯人を追うことにしました。
犯人を追う中でかつての因縁の相手とも出逢いました。その者はかつてミチルと恋人を拳銃を使って襲った相手でした。
そんな彼が今ではこの街で普通に生活している。かつての恨みで爆発しそうなものの、何とか踏みとどまるミチル。
ミチルはやはり馴染めないこの街から出る決心をします。
街から旅立つその最終日に、ミチルの前に仮面を被った男が現れます。
パーティ会場にも関わらずその場にいた全員がその仮面を被った男のことは見ないようにしているのです。
そう、仮面を被った男こそ神という存在でした。
街の人はこの仮面を被った状態の人を見ないようにする(見えていないと思い込む)そして他言しないようにするのです。
つまり、仮面を被っていればたとえ、目の前で殺人が行われても誰もいなかったと街の人は証言するということ。
仮面こそ王子を殺した犯人だと確信するミチルと逃げる仮面。
道中、因縁の相手とも対峙し正当防衛で殺し、ついに女王から仮面のものについての秘密を明かされます。
仮面を被ったものを神と定義し、さらに本物の神は別にいると言うのです。
実はその神というのはミチルが最初にあったマイカという老人でした。
マイカはこの街を創設した一人で、今では神として何をしても街の人からは見えない存在となっていたのです。(正確には見えても見えていないと思い込ませるようにしているだけ暗黙の了解)
そして、マイカは王子が母である女王にいかがわしいことをしようとしたとして殺したとのことでした。
これで事件が終わったと思いきやミチルは因縁の相手のパートナーに撃たれ、倒れてしまうのです。
意識が遠のく中主人公であるミチルの秘密が明らかになるのです。
以上が、「女王の百年密室」の内容の要約でした。
かなり端折っていて、どうして街の人が神を見ないようにしているのかなど細かい部分はぜひとも「女王の百年密室」を実際に読んでみてください。
主人公の秘密を解説(ネタバレあり)
主人公ミチルの秘密について詳しく紹介していきます。
ズバリ、ミチルの体はミチルのものではなかったのです。
主人公ミチルの脳内にはアキラというミチルの恋人が入っていたというわけです。
つまり、体はミチル、中身はアキラということ。
体に合わせて自分はミチルだと語っていましたが、中身、脳はアキラのものでした。
なので僕=アキラということです。
ミチルは死んだ時に脳だけ損傷し、体はほぼ無傷。
アキラは体だけ損傷し、脳は無事でした。
そのためミチルの体にアキラの脳を移植した形です。
ただ、単純に移植しようとした時アキラの脳を入れるのが大きさ的に不可能だとわかり、ロイディを利用することにしました。
ロイディの中にアキラの脳を入れ、脳からの信号を無線でミチルの体に送ることでミチルの体を操作しようということでした。
つまり、ロイディの中にアキラの脳はあって、体を動かす信号だけミチルの体に送られて、動くという仕組みです。
ミチルという存在は完全なコントローラーで動くロボットと言い換えてもいいかもしれません(肉体的には人間)
これによって最終的にミチルの体が銃で撃たれても僕(アキラ)が死ななかった理由がわかります。
ロイディの中に脳は格納されているので、無事だったということです。
主人公が結構ややこしい状態になっているのが最後の最後で判明するオチ、実はちょこちょこ伏線もあって結構楽しめる要素でしたね。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は森博嗣さんの「女王の百年密室」について紹介してきました。
SFとミステリーが融合された物語で結構引き込まれました。
ページ数が多いのと難しい点がちょくちょくあるので、決して手放しでおすすめはできませんが、読んで良かった作品でした。
個人的には森博嗣さんなら「すべてがFになる」の方が好きでしたね。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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